東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > とちぎ 心の健康便 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【とちぎ こころの健康便】

理不尽な苦情に直面したら 「正しさの綱引き」やめる

 悪質なクレーマーの存在が、しばしば問題になっています。サービスを提供する側にとって苦情は業務改善のヒントとなり得ますが、理不尽とも言える要求への対応に、苦悩する企業は少なくありません。苦情を言う側も受ける側も過剰に反応するようになり、「社会そのものに寛容性が失われている」という指摘も出ています。人々の心理や社会を包む「空気」に、何か変化が起きているのでしょうか。もしも自分が理不尽なクレームに直面したら、どう対応したら良いでしょうか。水島先生に聞きました。

 理不尽なクレームは、その人の「被害者意識」を反映するものです。「こんな目に遭った。どうしてくれる」という気持ちです。

 本来、クレーム対応係は「被害」を聞くべき仕事なのですが、立場上「被害者意識」という感情も聞かなければならないところが難しいものです。理不尽なクレームは、人を消耗させ、傷つけるもの。「なんでこんなにめちゃくちゃなことを言われなければならないのだろう」と思いますよね。

 クレーマーへの対応として、最も効果的なのは、「正しさの綱引きをやめる」ということです。クレーマーは、本人なりの「正しさ」に基づいてクレームをつけてきています。それが真実ではなく単に被害者意識を反映したものであっても、本人にとっては「正しいこと」なのです。

 そのクレームを「理不尽」と思う気持ちは、こちら側にとっての「正しいこと」。「正しいこと」同士で綱引きを続けても、どんどん過熱するだけです。

 大切なのは、「綱引き」からおりるということ。「負ける」ことではありません。

 相手がぶつけてくる「被害者意識」という感情を逆なでせず、感情に寄り添えばよいのです。具体的には、「とても勉強になりそうですので、詳しく教えていただけますか」と相手の話を聴く姿勢になればよいのです。「相手は正しいと認める」のと、「相手がそういう体験をしたことは相手にとっての事実だと受け止める」とは違います。「しかしですね」などと口を挟まずに穏やかに話を聴いていくと、相手は沈静化することがほとんどです。自分の話をじっくり聴いてもらうと、心が癒やされる人が多いからです。

 「正しさ」に基づいて対立する社会では、寛容性が失われるのも当然ですね。(精神科医・水島広子)

 

この記事を印刷する

PR情報