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【とちぎ こころの健康便】

勝負強くなるには 「自分」手放し人事尽くす

 「プレッシャーを楽しむ」という言葉があります。スポーツやビジネスの世界で成功を収めた人たちが、成功の理由に挙げることがありますね。逆に、そうはうまくいかずに、苦い経験をした人も少なくないでしょう。勝負強い人とそうでない人は、どこに違いがあるのでしょうか。「勝負所」に挑む前のちょっとした準備や心掛けで、プレッシャーをプラスの力に変えることはできるのでしょうか。水島先生に聞きました。

 私は、勝負に臨むにあたっては、「自分を手放す」が一番だと思っています。多くのプレッシャーが、「自分はうまくできるだろうか」「自分は失敗しないだろうか」といった、「自分」についてのもの。そうなると、気が散ってしまうのです。

 本来は勝負にかけて全神経を集中しなければならないときに、「自分は…」などと気を散らしていては十分な力を発揮できるわけがありません。

 私は精神科医であり、第一流のスポーツ選手にはもちろんかないません。しかし、私にとっては、患者さんの一回一回の診療が「勝負」です。「私はよい医者だと思ってもらえるだろうか」「相手に軽蔑されたらどうしよう」などと、自らの医師としての能力や権威に気を散らしていたら、患者さんと信頼関係をつくることもできなくなります。

 診療の時には「もしもうまく治せなかったら」もありません。相手の状態に百パーセント集中し、「自分が」を手放すと、本当によい診療ができますし、信頼関係が強固になります。「自分が」よく思われようとしているときよりも、そうでないときの方が、信頼関係がきちんとできる、というのも、おもしろいですが、よくよく考えてみると当然のことかもしれません。

 それぞれの職種によって違うと思いますが、私にとっての診療は、「自分を単なる媒体として、患者さんが自分の力とつながること」です。スポーツやビジネスでも、愛するものに専念できる機会に感謝し、「人事を尽くして天命を待つ」のがよいように思います。

 自分がやっていることを心から愛していれば、「天命」は何らかの形で助けてくれる。そんな大きな存在を感じることができれば、それに委ねてしまうことができると思います。(精神科医・水島広子)

 

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