東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 栃木 > とちぎ 心の健康便 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【とちぎ こころの健康便】

受験失敗、気持ちの切り替え 喪失感に寄り添って

 四月は新生活が始まる時期です。進学した人の中には、受験が思うようにいかなかったために、志望と異なる道を歩んだ方もいるでしょう。気持ちを切り替えて前に進めれば結構ですが、未練が残ったままだと、新しい生活を楽しめないかもしれません。受験は通過点に過ぎませんし、どの道に進もうとも新たな出会いや経験のチャンスが待っています。後悔の念を引きずっている人にどのような言葉を掛けたら、未練を断ち切って前向きな気持ちを抱いてくれるでしょうか。水島先生に聞きました。

 あらゆる変化が人間にとってストレスですが(それがポジティブな変化であっても適応を要するので)、特に本人にとってネガティブな変化の場合、適応に要するプロセスはそれだけ大きいものです。

 第一に忘れてはならないのは、「志望校に合格して有意義な学生生活を送る」という本人の夢が砕かれたことです。私たちはつい「でも、第二志望も良い学校じゃない?」「滑り止めすら落ちた人がいるんだから、行ける学校があるだけよい」「いつまでも過去のことをくよくよしていないで、新しい環境をエンジョイしなさい」などと声をかけがちです。

 もちろんそれらも真実なのですが、喪失感に圧倒されている本人には酷なことです。望んでいた結果が得られないときに喪失感を抱くのは人間として当然のこと。まずはその「喪失」を尊重する必要があります。

 そのためには、本人の愚痴にしっかり付き合ってあげること。客観的にはどうであれ、本人は望んでいた夢を失ったのですから、「頑張っていたのに残念だね」と、本人の喪失に寄り添ってあげる必要があります。

 「これから」の話はその後です。新しい生活に入って、いろいろと忙しくなってくると、実際には大したサポートがなくても本人は新たな環境へとなじんでいくものです。適応が難しいようであれば、話を聴いてあげてください。「愚痴」が足りなかったのであれば、さらに聞いてあげて「あれだけ頑張っていたから当然だよ」と言ってあげてください。

 「愚痴を言うなんて弱い」「現実は現実なんだから割り切って」というのは、実は本人が誰よりもわかっていること。それを理解して支えてあげれば、本人は本来の力で、前進していきます。(精神科医・水島広子)

 

この記事を印刷する

PR情報