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【福島原発事故】

原発 福島に負の連鎖 県外避難5万7000人

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 東日本大震災による震災関連死は福島、宮城、岩手の被災三県で二千五百五十四人が認定され、その半数以上となる千三百三十七人を福島が占める。背景には、原発事故で膨れ上がった避難者数と避難の長期化がある。

 「原発事故は避難者の分母が大きいから関連死という分子も増える。さらに元の家に戻って生活再建ができないところにも厳しさがある」。福島県避難者支援課の原田浩幸主幹は、県内の関連死が多い理由を分析する。

 復興庁がまとめた二月現在の避難者数は、宮城の十一万七千人、岩手四万二千人に対し、福島は十五万四千人。宮城、岩手は県内での避難が大半だが、福島は五万七千人が県外に避難し慣れない生活を送っている。

 復興庁は二〇一二年三月までに震災関連死した千二百六十三人の抽出調査をしている。九割が六十六歳以上で、災害弱者に大きなしわ寄せが生じたことを物語る。

 浪江町の佐藤良樹福祉こども課主幹は「病院をたらい回しされたり、施設機能が止まった病院で数日間とどまることを余儀なくされたりした人もいたようだ」と明かす。南相馬市は県内で医療・介護の中核施設が多く、入院患者千六十七人と六百七十九人の施設入所者がいた。津波被害でいったん市内に避難した後、原発事故で市外避難を迫られた人も多く、長距離移動が死期を早める原因となった。

 ある町では、介護の必要な両親を抱え、震災後の食料不足に悩んでいた男性が、原発事故で栃木県に退避。避難所に到着と同時に急死した。担当者は「原因は震災と原発が半分ずつ」と指摘する。

 避難生活だけが関連死の原因ではない。復興庁の分析では、原発事故のストレスによる肉体的・精神的負担などが、死と直結する人も福島県に三十三人いた。死亡にいたる経過として「原子力災害により心身ともに著しいストレスを受けた」「放射能の不安、今後の家族を心配しつつ体調悪化」などの例を挙げている。

<取材班から>「原発事故死ゼロ」は本当か

 震災の避難生活で体調を崩すなどして死亡した場合、震災関連死と認められる。ならば、「震災の避難生活」を「原発事故の避難生活」と言い換えれば、「原発関連死」と定義できるのではないか。こうした考えから、今回の取材は始まった。

 福島、宮城、岩手の三県で、津波や建物倒壊などの直接的な原因で亡くなった人数の中に占める福島の人の割合は10%。ところが、震災関連死となると52%に跳ね上がる。この数字の異常さこそ、原発事故の恐ろしさを示している。放射能で身体をむしばまれる死だけが、「原発事故による死」ではない。

 今回、関連死とした死のほかにも、原発にかかわる死はある。二〇一一年七月、福島で二人が自殺した。「避難中の自殺は原発事故が原因」として、東電相手に損害賠償請求訴訟を起こしているそれぞれの遺族は、関連死の認定を申請していない。

 遺族の代理人は取材に「(弔慰金が支給される)関連死認定なんて意味はない。金の問題じゃなく、なぜ死ななければならなかったのか問うているんだ」と語った。この二つの死は、本紙調べの七百八十九という数字に積み上げられていない。

 「原発事故で死者はいない」とする人たちが見つめようとしない多くの死。その重さを考えることなく、原発は必要か、という問いに答えを出すことはできない。 (飯田孝幸)

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