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【福島原発事故】

福島原発作業員ら「ピンはね」に怒り 手当不払い提訴

危険手当が支払われていない現状を訴える原発作業員の原告=東京・霞が関の司法記者クラブで

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 「一番危険な目にあっている末端の作業員が、なぜ手当を受け取れないのか」。東京電力福島第一原発の収束作業での待遇をめぐり、三日に東電など十六社を相手に損害賠償請求訴訟を起こした作業員四人のうち二人が、提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。

 四人は、東電が元請け企業に支払っている割り増し手当(危険手当)が、元請けから下請け企業を経る間に「ピンはね」されていると主張。会見では「東電などは手当が作業員に行き渡る体制をつくってほしい」と訴えた。

 今も第一原発で働く男性作業員(55)は、がれき処理や汚水タンクの点検などを担当し、被ばく線量は四三ミリシーベルトを超えた。「一番悔しいのは、作業員の努力が報われないこと。何もしないのに手当をむしり取っていく業者があまりにも多い」と憤った。福島県いわき市の男性(66)は二〇一一年五月から約二年間、がれきの運搬などに従事。「今のままでは、廃炉まで今後何十年もかかる収束作業で、優秀な作業員が集まらなくなる」と懸念した。

 訴訟代理人の海渡(かいど)雄一弁護士は「作業員が受け取るべき危険手当を、元請けや下請けなど関係会社が山分けしているのは異常な状態だ。東電にも、その現状を認識しながら放置した責任がある」と話した。

◆3年半 進まぬ待遇改善

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 東京電力福島第一原発の作業員の待遇は、さまざまな問題が指摘されてきた。これまでの三年半を振り返った。

 事故当初、がれきの山と化した現場で、作業員たちは拠点の免震重要棟の会議室や廊下に寝泊まりし、クラッカーなどで空腹をしのいだ。その後温かいレトルト食品やパンが提供され、福島第二の体育館に畳を敷いて眠れるようになったが、現場では高い放射線量下での作業が続いた。

 二〇一一年十二月十六日、野田佳彦首相(当時)が発表した「事故収束」宣言を機に、作業員を取り巻く環境は大きく変わった。

 「現場はこんな状況なのに、意味が分からない」。とまどいが広がったばかりか、待遇も悪くなった。

 東電はコスト優先の競争入札を進め、通常の工事並みに単価が下がった。あおりを受けた下請けは経費削減を図り、会社負担で滞在していたホテルを出るように言われる作業員が出始めた。危険手当打ち切りなどで収入も下がった。

 安価で請け負う新規参入業者が増え、以前からの業者は仕事が取りづらくなった。ベテラン作業員たちは次々と現場を離れ始め、被ばく線量限度に達した作業員も去った。慣れない作業員が増えた現場では単純ミスやけがが増え、対応に人や時間を割かれ、さらにミスが起きやすくなる悪循環に陥った。

 ようやく昨年秋、原子力規制委員会の指摘を受け、東電の広瀬直己社長が作業員の日当が平均一万円上がるようにすると発表した。

 しかし現状は一部の社で多少改善されただけで、大半は変わっていない。

 現場では、高濃度汚染水対策など被ばく線量が高い作業が増えている。ベテランの一人は「下請けは人集めに苦労している。募集しても人がなかなか来ない」とこぼした。 (片山夏子)

 

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