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【知られざる世界ランカー】

ジェットスポーツ・小原聡将 世界V3度、水を斬るサムライ

軽快に水上バイクを操る小原聡将=千葉県栄町の利根川で

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 中東の王国、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで小原聡将(21)の人気は絶大だ。水上バイクのレースが盛んなこの地で腕を磨き、世界選手権で3度の優勝を誇る。王族からもかわいがられる世界最年少のプロライダーは、子どもたちの憧れの的だ。

 競技名は「ジェットスポーツ」。そのタフなレースぶりから、彼に付いたニックネームはSAMURAI(サムライ)。通常、選手は自分のマシンで海外を転戦するが、資金のない小原は現地で借りる。それを器用に乗りこなして優勝してしまう。

 「運転技術には絶対的な自信がある。マシンさえ良ければ結果を残す自信がある」。初めてのレースは12歳。高校1年、16歳で早くも世界チャンピオン。歯切れの良い言葉は、10年ものキャリアと実績に裏打ちされる。

 「水面を滑走する、その非日常性がたまらない。見える景色も陸とは全く違う」。レースの魅力をそう語る。見どころは直線での加速と旋回技術。15分以上走り続けるが、「体力的に苦しい後半に、いかにペースを維持するか。精神的な強さが重要」。最高時速110キロも、水上では体感速度が2倍になるという。だからレースは過酷だ。

 ◇ 

 カエルの子はカエルだった。両親もジェットスポーツの元選手で、特に父・毅博(たけひろ)さん(50)は元世界王者。小原は3歳からレーシングカート、4歳からモトクロスを始めた。日本では水上バイクは免許が必要で、15歳9カ月にならないと受験できない。だが、ひょんなことから両親は息子の才能を知る。

 2006年、毅博さんが出場した世界選手権の応援で米国へ行った時のこと。水上バイクを1日練習しただけでジュニアの大会に飛び入り参加した小原は、いきなり世界11位となる。「もう少しでトップ10。1位を目指したい」。12歳の決意に父は動いた。

 13歳の時には、冬休みに練習のできるオーストラリアへ行かせた。そして14歳の時、仕事で単身ドバイに渡った毅博さんは「レースもできるから」と息子を呼んだ。小原はドバイの日本人学校に転校したが、ホームステイ先は、同年代の男子がいる王族の住居。ここで7カ月暮らした。毅博さんが述懐する。

愛用のマシンの前で笑顔の小原聡将

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 「ドバイのシェイク(王族)からトシユキをフルサポートしたいという申し出を受けた。いくら国技とはいえ、通常ではありえないこと」。恵まれた環境の下で力を付けた小原は、15歳でジュニアの世界ランク2位に浮上。16歳で日本の免許を取ると、なるべくして日本一となり、その後は世界一へと突き進んだ。

 ◇ 

 ジェットスポーツは金がかかる競技だ。その額は年間3000万円ほど。国内外約30社のスポンサーを持つ小原は、提供のほとんどを物品で受ける。海外で使うマシンを筆頭に、燃料のガソリン、スーツ、ヘルメット。中にはスポーツマッサージや歯の治療というサービスも。

 そしてレースの賞金で遠征費を賄う。優勝賞金は世界選手権で約500万円と高額なものもあるが、UAEやタイ、マレーシアの国内戦など50万〜60万円が一般的。小原は「海外遠征は黒字になるなら行くというスタンス。赤字にならないことが前提」。だから、プロといっても稼いでいるわけではない。

 実は、王族のファンも多い小原には、大口の協賛の申し出もあった。だが毅博さんは「額は少なくても、末永く純粋に応援してくれるところを受けた」という。ビジネスで国王に近づきたくて、小原の名前を利用する。そんなにおいがする大企業も一つや二つではなかった。

 「将来は日本でもメジャースポーツにしたい」と夢見る小原は、現在大学3年生。競技生活の足しになればとアルバイトをしている。時給950円。職種を尋ねたら、屈託のない笑顔で答えた。「ピザの配達です」。どこまでもライダーだった。 (牧田幸夫)

◆千葉工業大学3年生

<おはら・としゆき> 千葉県市原市出身、21歳。12歳から海外で水上バイクのレースに参加し、16歳で日本の免許を取得しプロ登録。16歳で世界ランキング1位になるなど、これまでに世界選手権、全日本選手権各3度優勝。マレーシア、フィリピンなど世界各地で行われる国際レースでも優勝多数。現在、千葉工業大学3年に在籍。

◆国内競技人口800人

<ジェットスポーツ> 水上バイクのレース。水面にブイで設定した800〜1000メートルの周回コースでスピードと旋回技術を競い、着順で順位を決める。川崎重工業の水上バイクに限定した日本ジェットスキー協会と、全メーカーの水上バイクが参加できる日本ジェットスポーツ連盟の2つの組織があり、国内競技人口は約800人。

 

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