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【知られざる世界ランカー】

ハンドボール・銘苅淳 熱き伝道師 駆ける

生徒を前にシュートの実演をする銘苅淳=名古屋市の千種高で

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 ハンドボールの本場・ハンガリーで、銘苅淳(30)の人気はすさまじい。単身、海を渡って3季目の2014〜15年シーズン、彼は世界最高峰のハンガリー1部リーグの得点王に輝いた。熱く、闘志を前面に出すプレーは観客を引きつける。「メカル」の名は欧州に広く知れ渡った。

 だが、それだけの実績をつくっても、日本代表に招集されることはなかった。15年11月、リオデジャネイロ五輪アジア予選。国内組中心で臨んだ男子日本は5位に沈み、五輪出場権を逃した。銘苅はもどかしそうに言った。「サッカーのように海外組が日の丸を背負わなければ、その競技に未来はないと思う」

 年が明けて今年1月。バーレーンで行われたアジア選手権。日本は3位となり、来年の世界選手権の切符をもぎ取った。初戦で韓国相手に26年ぶりの勝利を挙げ、勢いをつかんだ。今度はチームの中心に銘苅がいた。五輪予選の惨敗を受けて就任したスペイン人のオルテガ監督は、真っ先に銘苅を代表に呼んだ。

 1試合平均4得点。ハンガリー仕込みの高い守備力に精度の良い7メートルスロー。30歳で初めて日の丸を背負った銘苅は「代表は特別な集団。不安や恐怖などいろんな感情を乗り越えて得られるものがあった。また子どもたちの目標であり、憧れを抱く集団でなければと実感した」。

 2月、銘苅は新たなオファーを受けて別のチームに移籍した。ハンガリーに行って6チーム目となる。

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 明るい人柄に、情熱的な語り口。ことハンドボールの未来を語り出したら、もう止まらない。軽快なトークは十分ユーモアがあるのに、銘苅は「明石家さんまさんみたいになれるようにもっと精進しなければ」と笑う。ハンドボール版・松岡修造さん−。そう例える人は多い。

 オフシーズンなどを利用しての中学、高校での講習会は、社会人のトヨタ車体時代から、かれこれ7年は続く。昨年も12月にハンガリーから一時帰国すると、北は福島から南は鹿児島まで約10会場を駆け巡り、熱い指導を行った。「ハンドボールの面白さやすごさを伝えて、子どもたちにハッピーになってほしい」。まるで“伝道師”。声がかかればどこへでも行くし、その労力を惜しまない。

 ハンドボールの日本選手権を観戦するため、名古屋市に滞在中の12月25日は、愛知県立千種高校に駆けつけた。ハンドボール部顧問の林律子教諭が銘苅と同じ筑波大出身という縁で、7年前から訪問は続く。男女合わせて約50人の部員に声を張り上げた。

 「プレーは(シュートまで)完結させなさい!」「パスの回数に制限はないが、1回で(シュートを)打てるなら、打っていい!」。指導は具体的で分かりやすい。自ら実演してみせる。林教諭は「子どもたちがプロのトップ選手からじかに学ぶ貴重な機会。刺激になってます」。

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生徒に練習の指示を出す銘苅淳

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 中学で野球部に入った銘苅は、できたばかりのハンドボール部の顧問に誘われ、中学2年からこの競技にのめり込んだ。「走って、跳んで、ぶつかって。見ている人も楽しめるスポーツ」。その魅力を伝えようと、ほぼ毎日ブログを更新する。動画も配信するし、指導者用の教材も作る。松岡修造さんばりに、日めくりカレンダーも売り出した。

 そこにはマイナースポーツだからという、冷めたあきらめはない。メディアが取り上げないなら、こちらから話題を提供する。その情報発信力には驚かされる。

 夢は指導者。あえて厳しい環境のハンガリーに渡り、毎シーズンのようにチームを変えるのも、世界屈指の戦術や指導法の引き出しを増やしたいから。「優れた指導者が教えないと、子どもたちはうまくならないし、楽しくない。だから大学で(将来指導者となる)学生にハンドボールの楽しさを教えたい」

 銘苅の教えは、教え子たちによって次の世代へと引き継がれる。すそ野は確実に広がっていくはず。そんな超ポジティブ思考で、メジャースポーツへの青写真を描くのだ。 (牧田幸夫)

◆初の日本代表入り

 <めかる・あつし> 中学2年からハンドボールを始める。那覇西高、筑波大を経て社会人のトヨタ車体でプレー。2012年から活動の場所をハンガリー1部リーグに移し、14〜15年シーズンにバルマズイヴァロシュで得点王(20試合120得点)に輝く。今年1月のアジア選手権で初の日本代表入り。2月に2部ニーレジハーザから1部のメゾコベーチに移籍した。184センチ、93キロ。沖縄県浦添市出身、30歳。

◆競技登録者9万人

 笹川スポーツ財団の中央競技団体調査(2014年)によると、ハンドボールの競技登録者数は約9万人(登録チーム数約4700)となっている。同じくコートを使う他のボールスポーツと比較すると、バスケットボールは約62万人(同約3万4000)、バレーボールは約39万7000人(同約2万8000)。

 

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