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【知られざる世界ランカー】

総合格闘技・佐々木憂流迦 型のない自由な強さ

練習でパンチを放つ佐々木憂流迦(右)

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 得意技はスリーパーホールド。かつてはやった○○王子に例えれば、さしずめ「寝技王子」といったところか。総合格闘技の最高峰、米国のUFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)に参戦する26歳の佐々木憂流迦(うるか)=本名・佑太=は、日本を代表する新世代のファイターだ。

 5月8日、舞台はロッテルダム(オランダ)。ここ2試合負けが続いた佐々木は、階級をバンタム級(61・2キロ以下)からフライ級(56・7キロ以下)に落としてUFC4戦目のケージに立った。ウィリー・ゲイツ(米国)=戦績12勝6敗=との5分3ラウンド制。負ければ契約解除もありえる背水の一戦だった。

 手足が長く、パワフルな戦いをするゲイツにてこずりながらも、佐々木は徐々に本領を発揮していく。2ラウンド。バックを取ると、パンチ、エルボーを連続で入れて得意の裸絞めへ移行する。3分30秒。相手はたまらずタップ(降参)。UFCデビュー戦以来、1年9カ月ぶりの勝利を新階級で飾った。うれしさは格別だ。

 「勝てない時期が続き、つらいときもあったけど、ファンの応援があったから頑張れた。また、(熊本の)震災で大変苦しい思いをしている人々に少しでも元気を送ることができたらと思った」

 フライ級に転向した理由は「世界チャンピオンになりたいから」。視界の先には8度防衛の最強王者、デメトリアス・ジョンソン(米国)がいる。

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 佐々木のキャッチコピーは「時空を操るフローゾーン・マスター」。技術もさることながら、類いまれな精神力で勝ち続けてきた。

 物事に没頭した状態が「フロー」で、さらに進んだ極限の集中状態を「ゾーン」と呼ぶ。そして超一流のスポーツ選手は意識的にゾーンに入ることができるといわれる。20代にして佐々木もその一人だという。「試合に向けて極限の精神をコントロールできるようになってきた」

 2010年4月にプロデビュー。「修斗」を主戦場に日本人相手に無敗(18勝2分け)を誇った。その強さをUFCデビュー戦(14年8月23日、マカオ)で見せつけた。ローランド・デローム(カナダ)相手に1ラウンド1分6秒、スリーパーホールドで1本勝ちした。

 高度な寝技の攻防を“秒殺”で制した一戦。佐々木はこの日の興行のベストパフォーマンス賞(賞金5万ドル)に輝いた。通常、デビュー戦の選手が選ばれることはまずない。世界中の格闘技ファンが、驚きを持って佐々木の名を知ることになった。

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練習で寝技を掛ける佐々木憂流迦=東京都新宿区で

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 総合格闘技界の「秘蔵っ子」「期待のホープ」「最後のとりで」−。ファンを一気に増やした佐々木だが、責任もまた大きくなった。

 リングネームの「憂流迦」は、サンスクリット語で天狗(てんぐ)の意味だという。試合では天狗のお面をつけて入場する。天狗が好きな理由を「人間の形をしているのに、空を飛んだり、妖術を使ったり。自分もそれぐらい強くなりたいから」と語る。

 追求するファイトスタイルは「天狗のように型のない、自由な身のこなし」。そんな佐々木について目の肥えたファンは一様に「技が奇麗」と口をそろえる。技の一つ一つにも常に「美しさ」を意識しているという。

 軽量級でありながら、身長は180センチ。プロデビュー当初は「注目されなければ自分の価値は上がらない」とモデル活動にも挑戦したほどだ。ファッションへのこだわりも人一倍強い。

 修斗とともに総合格闘技の国内主要団体に数えられるZST(ゼスト)の上原譲代表は、ライバル興行出身の佐々木の魅力をこう語る。「モデルのようにすらっとして、マスクも甘い。それでいて天性の格闘家は、強くて頭も良い。そのギャップが魅力。地上波に出たら間違いなく人気が出ると思う」 (牧田幸夫)

<総合格闘技> 打撃(パンチ、キック)、固め技(関節技、絞め技)などを駆使して勝敗を競う。ボクシングのWBA、WBCに相当する世界的な統括組織がないため、プロ、アマ問わず各種団体が独立して世界王者、ランキングを認定して興行を行っている。世界規模で最強選手が集う米国のUFCは有名。国内主要団体は修斗、パンクラス、ZST、DEEPなど。

<ささき・うるか> 静岡・飛龍高時代はレスリング部に所属し、全国高校生グレコローマン選手権でベスト16。総合格闘家の五味隆典に憧れ、卒業後に和術慧舟會駿河道場入門。2010年4月プロデビュー。修斗を主戦場にキャリアを積み、13年修斗環太平洋フェザー級王者。14年からUFCに参戦中。戦績は19勝3敗2分け。本名は佐々木佑太(ゆうた)。静岡県沼津市出身、26歳。

 

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