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【知られざる世界ランカー】

シンクロナイズドスケーティング・内田靖子、小川真理恵 氷上の万華鏡、後継育成

シンクロ体験会で指導をする内田靖子(中央右)と小川真理恵(同左)=東京都新宿区で

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 羽生結弦や浅田真央らの活躍もあり、日本のフィギュアスケート人気は高い。だが注目を浴びるのは常にシングルで、ペアやアイスダンスはなじみが薄い。ましてや団体競技のシンクロナイズドスケーティング。知っている人はどれだけいるだろうか。

 海外で活躍した2人の日本選手が、今春の世界選手権を最後に現役を引退、新チームの設立に乗り出した。元カナダ代表の内田靖子(26)と、元米国代表の小川真理恵(28)。合言葉は「日本に世界基準のシンクロチームをつくる」。メンバーの募集を始め、随時体験会を開催。10月からコーチ稼業を本格化させる。

 「氷上の万華鏡」とも呼ばれるこの競技は、16人が一体となって滑走する。新体操やシンクロナイズドスイミングの氷上版。サークル(円形)やブロック(3列以上の箱型)、リフト(人を持ち上げる)、ホイール(プロペラのように回転)など主に八つのフォーメーションがあり、大人数で演技する迫力と一体感が最大の見せ場だ。

 音楽に合わせて行う演技は、ショート・プログラム(SP)2分50秒、フリー・スケーティング(FS)4分30秒。この中に2人が培ったものを結集させる。「カナダは柔軟性を生かした表現力」(内田)「アメリカは個々のスキルを生かしたプログラム」(小川)。そして「いいとこどりです」と口をそろえた。

 新チーム名は「Ace・of・Diamond」。「意味はダイヤのエース。16人のスケーターが宝石のようにキラキラと輝いてほしいから」と内田。始動3季目の2018〜19年シーズンの全日本選手権優勝、世界選手権出場を目標に掲げる。

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カナダ代表時代の内田靖子(持ち上げられている人)=内田さん提供

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 内田は6歳の時にシンクロに出合った。中学1年までシングルとのかけ持ちだったが、「ジャンプが得意でなかったので、みんなで滑っている方が楽しくなった」とシンクロに専念した。

 高校入学後の05年、大学のクラブチームにスカウトされ、全日本選手権優勝。これを皮切りに世界選手権は日本で3度出場したが、10年の10位が最高。過去のトップ選手がそうしたように、内田も海外で世界一を目指す道を選んだ。各国代表チームは、外国籍が4人まで認められている。

 「アイスダンスもしていたので、滑りがきれいなカナダがいいのでは、とコーチに勧められた」。モントリオールの名門チームのトライアウトに合格すると、今春まで2年間、カナダ代表で活躍。

 一方、小学時代は大会で安藤美姫さんに勝ったことがあるという小川。けがもあって15歳で競技をやめた。ところが21歳の時、ダンス留学でニューヨークに滞在中、リンクでスカウトされて、ショースケーターを目指すことに。10年の帰国後は、日本代表監督に誘われてシンクロを開始。

 「シングルにはない、16人だからこそ出せる迫力とスピード感に魅了された」。しかし、12年から出場した世界選手権は13位と14位。これが悔しかった。「シンクロを極めたい」と13年夏に再渡米。ボストンのチームで全米選手権2年連続優勝と結果を出し、シンクロ大国の代表の座をつかんだ。

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米国代表時代の小川真理恵(左から2人目)=小川さん提供

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 現在、国内に約10のチームがあるが、ここ2年間は全日本選手権に出場するシニアチームは、内田や小川が在籍した「神宮アイスメッセンジャーズ」(JIM)の1チームしかなく、自動的に日本代表となっている。他のチームは国際大会で規定する16人がそろわないため、オープン参加の扱いだ。現に国内のほとんどのチームは4〜10人で出場している。

 こうした競技存続への危機感も、2人が新チームを立ち上げた理由だ。内田は言う。

 「フィギュアはお金がかかり、家族の協力が不可欠。そんなイメージがシンクロにも影響している。またレベルの低いシングルの選手がシンクロに移るといったネガティブなイメージもある」

 課題が明確だからこそ、2人は変革への道筋はあると信じている。周囲を振り向かせるためには、まずは強いチームをつくるしかない。3季後の全日本選手権優勝は、7連覇中の古巣JIMに勝つことを意味する。どんな世界もライバルがいてこそ発展する。 (牧田幸夫)

 シンクロナイズドスケーティング フィギュアスケートの団体競技。16人の選手が一体となり、さまざまなフォーメーションをつくって滑走する。SPとFSの総合得点で順位を決める。世界選手権は2000年から始まり、日本は過去10位が最高。国内のフィギュアスケートの選手数は約1000人だが、シンクロは150人ほど。大小約10のチームがある。

◆元カナダ代表・内田靖子

<うちだ・やすこ> 4歳からスケートを始め、6歳の時にシンクロと出合う。日本で3度世界選手権出場後、24歳の時にモントリオールの名門「シュプリームス」のトライアウトを受けて加入。カナダ代表として世界選手権出場を果たし、15年6位、16年の5位で現役を終えた。茨城県つくば市出身。26歳。

◆元米国代表・小川真理恵

<おがわ・まりえ> 小学時代はノービスB日本代表。15歳で全日本出場資格7級を取得したが、けがで競技を断念。大学卒業後、シンクロを始めた。日本で世界選手権2度出場後、ボストンの「ヘイデネッツ」へ。14、15年は米国代表で世界選手権に参戦し、ともに7位。16年は日本代表。東京都板橋区出身。28歳。

 

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