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【知られざる世界ランカー】

縄跳びパフォーマー・生山ヒジキ 役者仕込みの普及術

児童に縄跳びのパフォーマンスを披露する生山ヒジキ=東京都葛飾区立西亀有小で

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 「プロを名乗る縄跳びプレーヤーは日本にたくさんいますが、縄跳びを職業として確立したのは僕だけです」。生山ヒジキ(34)は、そう言って胸を張る。

 冬の縄跳びシーズンを迎え、生山の忙しさもピークを迎えた。連日、日本各地の小学校や児童館などで出張授業をする。パフォーマンスチーム「なわとび小助」を主宰して7年目。訪れた小学校は500校以上、教えた児童は20万人を超える。

 11月下旬、東京都葛飾区立西亀有小を訪れた。石渡孝校長の「縄跳びの元世界チャンピオン。ギネス世界記録を六つも持つすごい選手です」の紹介に子どもたちの目が輝く。圧巻のパフォーマンスを食い入るように見つめた。

 あや跳びや交差跳びに二重跳びや三重跳びを掛け合わせた複雑な技。四重跳び、五重跳びといった高速技には思わず歓声が湧き上がる。その後の授業は、子どもたちが跳ぶ番だ。生山が悪い見本を示しながら、うまく跳べるコツを伝授していく。

 「大げさに言えば、跳べるか跳べないかは、子どもたちが冬を楽しく過ごせるかどうかが決まる一大事。僕は縄跳びの入り口のところを手助けしているだけです」

 そんな生山がひそかに自慢に思っていることがある。「縄跳びを始めた子どもが最初に挑戦する大きな技。二重跳びを初めてできた瞬間の笑顔を日本で一番たくさん目撃しているのが僕です」

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 縄跳びに夢中になったのは小学3年の時。初恋の担任の女性教諭に気に入られようと猛練習した。「できなかった技ができるようになることがうれしくて、どんどんのめり込んだ」。いつしか校内で「チャンピオン」と呼ばれるほどになった。

 その後、中学は陸上部、高校は水泳部とスポーツを続けたが、縄跳びは自然と遠ざかった。再開したのは本格的に役者を目指していた24歳の時。あるオーディションでの「特技は?」の問いに、縄跳びが得意だったことを思い出した。腕を磨こうと週1度、普及団体の練習に参加。見たこともない技の数々に縄跳びの概念が根底から覆された。縄跳びの技は1000以上もあるという。

 「表現をしたくて芝居をしていたのに、当時は自信もなく、誰にも負けない特技が欲しいと思っていた。縄跳びを手にすることで表現の幅が広がったと思う」

 芝居の傍ら、ボランティアで子どもたちに縄跳びを指導する生活が続いたが、7年前に転機が訪れる。役者仕込みの巧みな話術で教える生山の指導は評判となり、依頼が急増した。縄跳び一本で食べていくという、前例のない道を歩み始めた。

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児童に縄跳びを指導する

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 ヒジキという名は、芝居をしていたころに付けた芸名だが、その由来は海藻のヒジキだという。デパートで海産物の売り子のアルバイトをしていた時、店主が言った。

 「海藻の中で一番栄養のバランスが良いのがヒジキだ。ヒジキのようにバランスの良い人間になれ」

 「確かに落ち着きがなくバランスの悪い人間だったかもしれない」と笑って振り返る生山だが、「なわとび小助」を立ち上げてからは、最高のパフォーマンスをするために、ストイックに自分を律している。

 競技者としても30秒間の後ろ跳び回数135回など、決められた時間内に跳ぶ回数で六つのギネス世界記録を更新。2014年の世界大会では5種目に優勝し「世界チャンピオン」の称号も得た。

 縄跳びは、「ロープスキッピング」の名称で、全日本選手権も開催されているが、競技としての知名度はまだまだ低い。元役者で縄跳びを職業にしたパイオニアは、競技にとどまらない一本のロープの可能性をこう訴える。

 「ステージパフォーマンスというと、だいたいの子はEXILE(エグザイル)などをまねてダンスをする。表現の個性の一つとして縄跳びがあってもいい。表現にはいろいろな選択肢があることを知ってほしい」 (牧田幸夫)

 <いくやま・ひじき> 本名・生山雅士(まさし)。ロープパフォーマンスチーム「なわとび小助」代表。日本各地の小学校や児童館で出張授業を行い、縄跳びの新しい楽しみ方を提案、普及活動を展開する。競技者としても30秒間での後ろ跳び135回をはじめ、30秒間後ろ二重あや跳び66回、30秒間10メートル縄跳び20回など六つのギネス世界記録を保持。これは日本のスポーツ選手では、米大リーグでプレーするイチロー(マーリンズ)の七つに次ぐ多さ。東京都港区出身。34歳。なわとび小助の公式サイトはhttp://nawatobikosuke.com

 <ロープスキッピング> 日本ロープスキッピング連盟(JRSF)が主催する国内最大の大会、全日本選手権の個人戦は(1)30秒スピード(かけ足跳び)(2)3分スピード(同)(3)フリースタイル(60〜75秒間の自由演技)(4)30秒スピード(二重跳び)(5)三重跳び(連続)−の5種目が行われる。昨年の第11回大会は黒野寛馬が4種目を制したが、その記録は(1)※101回(2)※490回(4)91回(5)177回。※かけ足跳びは片足カウントのため、ロープは2倍の数を回している。

 

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