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【知られざる世界ランカー】

ドッジボール 吉田隼也・日本代表総監督 小学校での経験武器に

子どもたちにドッジボールの指導をする日本代表総監督の吉田隼也=東京都北区で

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 子どもの頃、誰もが一度はやったことのあるドッジボール。小学生が真剣に打ち込むイメージが強いこの球技に、大人(13歳以上)の日本代表があることはあまり知られていない。日本代表総監督の吉田隼也(36)は「日本人ならだれもが経験しているのは大きな武器。世界一を狙えるスポーツ」と力を込める。 (牧田幸夫)

 日本ドッジボール協会(JDBA)が日本代表を編成したのは2012年。韓国での初の海外遠征にチームを派遣した。翌13年からは日本、韓国、台湾、香港の4カ国・地域でアジアカップが開催。日本は男女とも第1回大会から3連覇中の強豪国だ。総監督の吉田は現役の選手、男子監督と三役をこなす。

 日本代表結成時、全国から名乗りを上げた選手はわずか14人。当時最年長の31歳だった吉田は、21歳の時に大人チームの先駆けである「東京選抜」を立ち上げて10年がたっていた。「サッカーや野球の日本代表と同じ『日本代表』。この機会を逃すわけにはいかない」と手を挙げた。

 とはいえ、遠征費は自腹で、うまい選手も様子見を決め込んでいた。ドッジボールの日本代表に一体どれほどの価値があるのか。周囲の冷ややかな目に吉田は思った。「価値はこれから自分たちで高めていけばいい。ないのならつくればいい。あきらめないで続けてきたドッジボール界に爪痕を残したかった」

 子どもチームの指導歴は18歳の時から。指導者として全国優勝の実績を持つ吉田が代表チームを束ねるのは自然の成り行きだった。

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 「5分間という短い時間の中で、速いボールを投げたり、避(よ)けたり、キャッチしたり。さまざまな攻防がある。体の小さい子も活躍でき、それぞれの個性が生かせる競技。大人になればより細かい戦術がある」

 ドッジボールの魅力をこう語る吉田が、競技を始めたのは小学4年の時。2歳年上の兄と大会に出場したのがきっかけだ。中学、高校時代は野球に打ち込んだが、小学生の時に在籍していたチームは監督が父で、コーチは兄。一家にとってドッジボールは生活の一部だった。

 復帰したのは18歳の時。強くなったチームは70人を超える大所帯となり、コーチとして兄を手伝うことに。そして21歳の02年、「お手本を見せながら指導していると、血が騒いで競技をしたくなった」と大人チームを結成。有志の集まりを「東京選抜」と命名したのも、全国各地の大人チームを刺激したかったからだ。

 主役は子どもで、大人は審判など裏方に徹するべきだ−。そんな声もあったが、吉田は「小学生に本気で指導して、好きにさせた責任がある。卒業したら終わりでいいのか。中学生になっても続けたい子は多い」と大人チームの普及に突き進んだ。

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 結成6年目を迎えた日本代表は、小学生の憧れの存在になった。受け皿となる大人チームは「常時活動しているのは50ぐらい。競技人口も1000人未満」というが、全日本選手権の予選を全国9会場で行うまでになった。今後の課題は国際化への取り組みだ。

 1個のボールで対戦する日本のルールは、世界的に見たら少数派。海外では複数のボールを使うのが一般的だ。欧米を中心に30を超える国・地域とかかわりを持つ世界ドッジボール協会が主催するワールドカップの試合は、5個のボールを使う。

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 吉田は「愛している日本のドッジボールを世界に普及させたい気持ちは変わらない。それでも世界とつながるために、共通ルールで勝負したい気持ちもある」と語る。

 吉田自身、30歳の時にイギリスのチームの練習に参加。その後、アメリカでプロテストに合格し、短期間プレーした経験がある。「ルールは違っても、投げる、避ける、捕ると基本技術は同じ。日本選手は捕る技術に優れているので、世界で十分に活躍できる」と太鼓判を押す。

 伝統は維持しつつ、一歩踏み出して世界を舞台に戦うのも面白いと思う。

<よしだ・としや> としま若葉小学校(東京都北区)の児童中心のドッジボールクラブ「WAKABA−CLUB」監督。前身のチームではコーチとして全国優勝。児童の指導の傍ら、2002年に大人チーム「東京選抜」を結成し、自身も選手として活躍。12年に編成された日本代表チームでは総監督を務め、男女ともアジアカップ3連覇中。東京都北区出身。36歳。

<ドッジボールのルール> JDBAの公式ルールは1チーム12人で戦い、自分の陣地(内野)と相手コートの周囲(外野)に配置。当てられてアウト(退場)になった選手も外野から当てれば内野に復帰できる。5分間の攻防の末に、内野に多く選手が残っていたチームが勝ち。

 海外では複数のボールを使い、コートは外野がない。ベースとなっているアメリカン・ドッジボールは、1チーム6人で使用するボールは5または6個。全員アウトになると1セット終了で、2セット先取で勝利。ボールに当たるとアウトになるのは日本と同じだが、キャッチすると投げた選手が退場になり、キャッチした側の選手が1人復帰できる。

 

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