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【知られざる世界ランカー】

ハンググライダー・鈴木由路 飛ぼう感動の空を 

ブラジルの空を飛ぶ鈴木由路=2016年9月(鈴木さん提供)

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 歌手ピコ太郎さんのヒット曲「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」。世界的なブームの中で、ハンググライダー日本代表の鈴木由路(35)は今年1月、フライト中にPPAPを演じる自身の姿を動画サイトにアップした。

 「もっとハンググライダーに注目してほしい」と始めた鈴木の動画シリーズ「空で○○やってみた」の新作。これまでに爪切り、ひげそり、耳かき、目薬、けん玉、パン食い競走…。テレビ番組では、パジャマから背広に着替え、散髪にも挑戦した。

 正直、賛否両論があるという。それでも鈴木はぶれることなく、この先も続けていくという。次回作のアイデアに知恵を絞る。

 「ハンググライダーがメディアに取り上げられるのは決まって事故の時ばかり。危ないイメージを持たれがちだが、むちゃをしなければ危ないことはない。空でいろんなことをし始めたのも、こんなこともできるほど操縦は難しくない。誰にでもできることを知ってほしいから」

 ハンググライダーは、上昇気流に乗って高度を上げて楽しむスポーツ。国内の競技では、30〜100キロを1〜2時間かけて飛ぶ。雲や地形を参考に、良い上昇気流をつかまえられるかどうかがポイント。経験がものをいう。

 日本のトップ選手である鈴木には二つの目標がある。一つは競技者として8月にブラジルで開かれる世界選手権で日本人初のメダル獲得。そしてもう一つがハンググライダーをメジャースポーツにすることだ。自身で付けた「空の伝道師」というキャッチフレーズからも、普及活動への熱い思いが伝わってくる。

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 大空に憧れたのは小学高学年の頃。宮崎駿監督のアニメ映画「天空の城ラピュタ」の主人公がたこに乗って夜明けを迎える場面に感動。「将来、自分は空を飛ぶと決めていた」と振り返る。

 高校3年の時、多摩川の河川敷でジョギング中にパラグライダーの練習を見かけた。ネットで調べると、ハンググライダーは「ラピュタ」のたこそのものと思った。運命を感じた鈴木は、サークルのある東京農工大に進み、「大学生活の大半を空で過ごした」。

 大会への初出場は大学2年の時の「池田山カップ」。13位という好成績に「これならいけるかも」と積極的にレースに参戦。3年の時にはすっかりのめり込み、1年間休学して競技に専念した。

 3カ月間のオーストラリア武者修行も敢行。現地で出場した初の海外レースでは、180キロの長距離を4時間弱でゴール。「世界的な大会でも戦える」と自信をつかむと、帰国後の2004年には国内ランキングで10位に入るなどトップ選手の仲間入り。07年には世界選手権初出場(82位)も果たした。

 「鳥のように空を飛ぶ。こんな楽しいことをみんなはなぜしないんだろうか?」。競技と普及に専念するため、11年には4年間勤めた一部上場企業を辞めた。

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「目標は世界選手権の表彰台」と話す鈴木由路=茨城県石岡市で

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 そこには必ず感動がある。初めて空を飛んだとき。上昇気流に乗って飛び立った山を見下ろしたとき。高度2000メートルからの景色で地球が丸いことを実感したとき。

 鈴木は「ハンググライダーはうまくなればなるほど感動的な体験が増えていく」と力を込める。そして「雲の上で見るブロッケン現象(※)は感動そのもの」とも。

 鈴木が普及活動に力を入れるのも、そんな感動を多くの人に味わってほしいから。しかし、国内の大会で一般の観客はまだまだ少ない。

 「集客力がないのなら、人が集まっているところでハンググライダーをPRすればいい」と、鈴木は12年から4年間、山形県南陽市で「南陽スカイパーティー」と題したイベントを主催した。

 テイクオフ場に飲食や雑貨の屋台を出し、仮設ステージではアーティストやパフォーマーが盛り上げる。そこで体験飛行を行い、実際に飛んでいるところを大勢の人に見てもらう。少しずつだが、手応えは感じている。

 「休みの日には空を飛ぶ。そんなOLやサラリーマンも増えています」(牧田幸夫)

 (※)ブロッケン現象 背後から差し込む太陽の光が雲や霧によって散乱され、影の周りに虹色の光の輪が現れる現象。

◆30〜100キロ飛行 国内の競技人口1000人

<ハンググライダー> 一般的なパイロンレースは、気象条件に合わせて用意したポイントを通るフライトコース(タスク)を組み、スタートからゴール地点までの飛行時間の速さを競う。タスクの長さは日本の競技だと30〜100キロ、海外では100〜300キロを2〜5時間以上かけて競う。小型のGPSを装着してフライトし、GPSの軌跡から時間や得点を算出する。国内の競技人口は約1000人。

<すずき・ゆうじ> 小学生の頃に「将来、空を飛ぶ」という夢を抱き、東京農工大でハンググライダーを始める。競技活動の一方、大空の魅力を知ってほしいと「空の伝道師」のキャッチフレーズを掲げ、普及活動を展開する。世界選手権の戦績は、11年27位、13年32位(日本人1位)、15年49位。1月現在の世界ランキングは43位。東京都昭島市出身。35歳。

 

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