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【知られざる世界ランカー】

総合格闘技・松田干城(たてき) 雑草の拳 セレブも魅了

UFCのデビュー戦でクリス・ビールにキックを放つ松田(左)=2014年9月、米コネティカット州で(ゲッティ・共同)

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 スポーツ科学を学びに行った米国で格闘技にのめり込み、世界最高峰の総合格闘技団体・UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)に参戦するほどのファイターに上り詰めた。ボストンを拠点に活動する松田干城は、元高校球児で大学院を出て五カ国語を操る。異色の経歴の持ち主だ。

 三月、松田は日本の総合格闘技団体「パンクラス」の興行に参戦した。逆輸入ファイターとして、国内での試合は昨年九月に次いで二度目だが、今回の一時帰国では、松田のもう一つの顔が注目された。それが世界で最も稼ぐスーパーモデル、ジゼル・ブンチェン(ブラジル)の個人トレーナーだ。

 松田が経緯を説明する。「二〇一六年四月、ジゼルの秘書から接触があり、初回のトレーニングを行った後、『タテキと続けたい』と言われた。自分の学位やケトルベル(筋力トレーニング用の器具)の資格が評価されたようだ」。コーチング学を修めた松田が提供するプログラムは、ブンチェンのどんな要望にも応じる。

ジゼル・ブンチェン(右)の個人トレーナーを務める松田(ジゼル・ブンチェンのインスタグラムより)

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 十一月にブンチェンが自身のインスタグラム(写真共有アプリ)で、ミット打ちやキックの様子を動画で公開。世界的ファッション誌「VOGUE」(ヴォーグ)でも紹介されたことから、「タテキ・マツダとは何者?」と話題になった。動画の再生回数はすでに三百万回を超えている。

 判定負けしたパンクラスの試合から数日後、都内で松田が講師を務めるワークショップが開かれた。ブンチェンも実践している松田独自のエクササイズを体験できるとあって、多くの女性が参加した。

 「体を鍛えるのではなく、動作を鍛える」内容で、筋肉の可動域を広げたり、運動神経を活性化させる運動や動作を紹介。松田は参加者に「セレブはハードなトレーニングで体形を維持しているわけではありません。日々のメンテナンスです」と強調し、睡眠や食事などの大切さも説いた。

 高校時代は神奈川県の野球名門校で白球を追った。レギュラーにはなれず、引退後に仲間と始めたフルコンタクトの空手で格闘技に目覚める。卒業後は、「一流のアスリートを育てる存在に」と渡米。ボストン郊外の大学でスポーツ科学を学んだ。しかしジムで格闘家らの練習相手をするうち、「まだ十八歳。自分もスポットライトを浴びたい」と思うようになった。

 日本だったら、その思いは否定されたかもしれない。だが米国では「だれもが背中を押してくれた」。タイにムエタイの修行に行き、大学四年になると総合格闘技でプロデビュー。卒業後はブラジルに渡り、柔術の修行もした。そして海外の行く先々で言葉を習得した。

ワークショップで女性にトレーニングを指導する松田=中央区銀座で

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 ローカル大会でキャリアを積んだ松田は、一四年九月、ついにUFCのオクタゴン(八角形の試合会場)に立つ。過去に多くの日本のエリート選手がUFCと契約したが、彼らとの決定的な違いは、松田は日本での実績が皆無なこと。本場米国で一から積み上げてきた。翌一五年一月と二試合続けて判定負けして解雇されたが、「格闘家としてまだまだ強くなれる」とUFC復帰を目指している。

 「将来は日本のスポーツ界に貢献したい」。その思いは渡米前と変わらないが、日本を離れて気付いた。「日本のことを客観的に見られるようになり、より好きになった」。日本人として戦うことに誇りを感じている。 (敬称略)

 <総合格闘技> 打撃(パンチ、キック)、固め技(抑え込み技、関節技、絞め技)、投げ技など、さまざまな攻撃法を駆使して競う格闘技。ルールで攻撃手段の制約を最大限排除している。ボクシング、空手、ムエタイ、柔道、レスリングなどさまざまな格闘技の技術が必要とされる。

 <まつだ・たてき> 桐蔭学園高(横浜市)時代は野球部に所属。卒業後、米マサチューセッツ州のセーラム州立大学に進み、スポーツ科学を専攻。ノースイースタン大学で修士課程を修める。在学中からプロの格闘家として活動。2014年9月、28歳でUFC出場を果たすが、デビュー戦でクリス・ビール(米国)に判定負け。2戦目も判定で落とし契約解除。昨年9月からパンクラスに参戦している。総合格闘技の戦績は13勝8敗。170センチ、57キロ。品川区出身。米ボストン在住。31歳。

文・牧田幸夫/写真・朝倉豊

 

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