東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 知られざる世界ランカー > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【知られざる世界ランカー】

ラリーでつなぐ思いやり フレスコボール 芝卓史・斉藤亮太ペア

オダイバカップでラリーを繰り広げる芝(左)と斉藤

写真

 カン、カン、カンと甲高いラリー音が砂浜に響く。ブラジル・リオデジャネイロ発祥のビーチスポーツ「フレスコボール」。日本に上陸して約四年だが、トップ選手の腕前は本場ブラジルで通用するほど。日本ランキング一位の最強ペアが、芝卓史(29)と斉藤亮太(23)だ。

 五月六日、お台場海浜公園(港区)で開かれた今季国内第二戦「オダイバカップ」。三月の第一戦「ミウラカップ」に圧勝した芝・斉藤組は、出場二十四組の最後に登場。息の合った高速ラリーを披露し、観客を沸かせた。

 それぞれ別の女性選手とも組んでいた二人にとって、この日二回目の試合。優勝したが合計六百六十九点は、前回より七十点もスコアを落とし、二位との差も詰められた。芝は「過去の自分に負けて悔しい」と言い、斉藤は「調子が上がらず不安でいっぱいだった」。優勝のアナウンスに、二人は思わず目頭を押さえた。

 フレスコボールは羽子板のような木製ラケットで、ゴム製のボールを七メートル以上離れて打ち合う。しかし、ビーチテニスなど他のラケットスポーツとは似て非なるもの。向かい合う二人は敵ではなく味方同士。五分間のラリーの回数や技・スピードを採点方式で競う。

 「互いに相手の打ちやすいところにボールを打ち返します」と芝。「思いやりのスポーツ」といわれるゆえんだ。

 八月のジャパンオープン(日本選手権)で国内三大会連続優勝を目指す。三大会の通算得点最上位ペアが十二月のブラジル選手権コパカバーナ大会の出場権を獲得する。日本の競技力が認められ、今年初めて日本フレスコボール協会に特別出場枠が与えられた。

 二人は「世界最高峰の大会で、日本の実力を存分にアピールしたい」と意気込む。

 競技を始めたのはともに二〇一五年夏。芝は、早稲田大の後輩で日本代表の倉茂孝明に誘われた。学生時代はテニスサークルに在籍していた芝だが、「テニスにはない面白さを感じた。打ち合う相手は敵ではないので、誰とでも仲良くプレーでき、友達の輪が広がっていった」。

 斉藤は体験会に参加したのがきっかけ。普及活動で来日していた女子世界一のブラジル選手から手ほどきを受け、「世界チャンピオンに『上手ね』と褒められてその気になった」。斉藤もテニスやビーチテニスをしていたが、「自分は前へ前へと行くタイプではないので、相手を打ち負かす対戦型のスポーツよりも向いていると思った」。

 倉茂の勧めでペアを組んだ二人は、一六年三月の初心者大会で優勝すると、「トップを目指したい」と土、日は、練習に明け暮れた。教材は世界のトップ選手の動画。芝は「上達法が確立されていないので、自分たちのプレーをビデオで撮影し、見比べながら試行錯誤を繰り返した」。努力が実り、八月のジャパンオープンで二位と大躍進。始めて一年で日本代表の座をつかんだ。

 堅実なプレーが持ち味の芝は「斉藤は(ボーナス点が取れる)アクロバティックなプレーが得意。良さを引き出したい」と話し、斉藤は「芝さんは熱血型。声を出してプレーを盛り上げてくれる」と認め合う。高速ラリーになると、打球の速さは時速七十キロにも。七メートルの距離では体感速度は百二十キロだという。

 体験会で初心者に指導する機会が増えた斉藤は「ペアを組む相手への思いやりをラリーでつなぐから、達成感を味わえ、二人の仲も深まります」とPRする。三月に結婚した芝のお相手は女子のトップ選手。「フレスコ婚」も期待できるのだ。 (敬称略)

バックハンドで打ち返す芝

写真

股抜きショットを披露する斉藤=いずれも港区のお台場海浜公園で

写真

 「知られざる世界ランカー」は、世にあまり知られていないマイナー競技に光を当て、トップ選手の奮闘ぶりを伝えます。運動面に掲載してきましたが、前回(五月二日)の二十四回目からTOKYO発に移しました。随時掲載します。

 文・牧田幸夫/写真・平野皓士朗

<プロフィル> 2016年にペアを組み、3月の初心者向け大会・ミウラオープンで優勝。8月のジャパンオープンで2位となり、日本代表強化指定選手に選ばれた。初の海外遠征となった9月のワールドリーグツアー・イタリア大会は12位。17年は3月のミウラカップ、5月のオダイバカップと国内大会を連覇し、現在日本ランキング1位。日本フレスコボール協会スタッフとして普及活動にも力を入れる。芝は埼玉県春日部市出身でIT企業に勤務。斉藤は横浜市出身で専修大4年。

<フレスコボール> リオデジャネイロのコパカバーナビーチで1945年に考案された。フレスコはポルトガル語で夕涼みの意味。2人がペアになり、7メートルの距離で5分間、ラケットでボールを打ち合う。ラリーは1打1点で加点され、落球はマイナス2点。アタック(来た球以上の速度で打ち返す)やジャンピングショットなど魅力的なプレーにはボーナス点が加算され、合計得点を競う。ブラジルの競技人口は推計70万人。欧米など約20の国・地域に普及している。日本では2013年に日本協会が設立され、15年からジャパンオープン(日本選手権)が始まった。国内競技人口は約1000人。

 

この記事を印刷する

PR情報