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【知られざる世界ランカー】

本場インドで修業 カバディ日本代表 下川正將主将・河野貴光副主将

カバディ日本代表の練習で汗を流す下川正將(左)と河野貴光(右奥)=北区で

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 「カバディ、カバディ、カバディ…」。詳しいルールは知らなくても、言葉を連呼する「鬼ごっこ」に似た競技といえば、一度は耳にした人も多いだろう。インドの国技・カバディ。男子日本代表をけん引する主将の下川正將(28)と副主将の河野貴光(24)は、本場のプロリーグから招聘(しょうへい)されるほどのトッププレーヤーだ。

 週三回、都内で日本代表の練習が行われている。「集団格闘技」といわれるだけあって、タックルなど激しい接触プレーは迫力がある。目下の目標は二〇一八年にジャカルタ(インドネシア)で開かれるアジア大会優勝だ。

 日本は一〇年広州大会(中国)で銅メダル獲得の快挙を達成しながら、一四年仁川大会(韓国)は予選敗退。大会後に主将になった下川は「何としても最強インドに勝ちたい。フィジカルで劣っても、コンビネーションの精度で世界一を目指す」と意気込む。打倒インドに燃えるイラン、韓国、タイ、バングラデシュも強敵だ。

 日本の競技力を底上げしたのが、トップ選手のインドプロリーグ(PKL)参戦。PKLはインドの経済成長を背景に一四年に八チームで結成された。将来の国際化を見据え、各国の選手を受け入れており、スター選手の年収は日本円で数千万円にもなるほど。

 下川は一四年から一六年までの三シーズン、ムンバイのチームで腕を磨いた。「最初のころはレベルの違いを痛感した」と言うが、一五年は主力選手として優勝に貢献。「日本代表を強くすることはもちろん、一個人としても世界一を追い求めたい」と、アジア大会後の一九年に四度目の参戦を計画している。

 一方、河野は一四年にデリーのチームでプレーした。「個々の能力が高い。身長が同じで、ポジションも自分と同じ守備の選手はよく観察し、プレーの参考にした」。この六月に再びインドに渡り、現在、プネーのチームで二度目の参戦中。今シーズン、PKLでプレーする唯一の日本選手だ。

 高校時代は下川が野球部で、河野はラグビー部。ともに大正大(豊島区)で初めてカバディを始め、その面白さから競技にのめり込んでいった。

 「攻撃時だけでなく、守備のときにも得点が入る。また点数が一気に動くこともあるので、最後の最後まで予断を許さない」(下川)、「個人技とチームプレーの融合。タックルなどラグビーと共通点が多い」(河野)。

 卒業後はOB中心の大正仏陀(ぶっだ)でプレー。いわば先輩、後輩の間柄だ。大正大は伝統的に僧侶の選手も多く、河野も実家が天台宗の寺院で、いずれは住職を継ぐという。

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 トップ選手ほど遠征費など経済的問題と直面する中、下川は仕事とカバディを両立してきた。夕方からの練習時間を確保するため、始業が午前三時からの築地の水産卸会社で五年間勤務。現在は、保険会社の営業マンで、「成績さえ出せば、時間はある程度自由になる」。

 下川は今後、競技普及の先頭に立ち、スポンサー募集など資金集めや、情報発信にも本格的に取り組むつもりだ。

 競技を描いた漫画「灼熱(しゃくねつ)カバディ」の人気もあって、日本カバディ協会が毎月一回開く体験会には、高校生、大学生を中心に初心者の参加も増えている。しかし、彼らが本格的にプレーしようと思っても、基礎から教える受け皿がないのが実情だ。

 「今は大学のサークルで始め、卒業すると競技をやめている。続けたい人が続けられる環境をつくっていきたい」。下川が力を込めた。 (敬称略)

 文・牧田幸夫/写真・朝倉豊

<河野貴光> 大正大学でカバディを始め、2年で日本代表入り。大学時代は全国学生選手権で4連覇した。4年生の2014年にはインドのプロリーグに参戦。仁川アジア大会にも出場した。卒業後は、大正仏陀に所属し、16年から日本代表副主将を務める。17年夏、再びインドのプロリーグに参戦中。170センチ、70キロ。僧侶。さいたま市出身。24歳。

<下川正將> 大正大学でカバディを始め、大学3年の2009年に日本代表初選出。10年広州アジア大会で銅メダルを獲得した。卒業後は、大正仏陀に所属し、全日本選手権は12〜15年まで4連覇。14〜16年にはインドのプロリーグに3季続けて参戦した。14年10月から日本代表主将を務める。170センチ、75キロ。保険会社の営業マン。埼玉県白岡市出身。28歳。

<カバディ> 古代インドで行われていた武器を持たずに数人で獣を囲み、声をかけながら捕まえる遊戯性の高い狩猟がルーツとされる。1チーム7人で、攻撃と守備を交互に行いながら対戦。攻撃側は敵陣に1人で乗り込み、「カバディ」と唱えながら守備側の選手にタッチして、捕まらずに自陣に戻ると触った人数分の得点が入る。捕まると、守備側に1点が入る。タックルなど激しい接触があり、インドを中心に南アジアの国々で人気がある。アジア大会では1990年北京大会から採用された。国内競技人口は約300人。

 

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