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【知られざる世界ランカー】

五輪目指す「伝道師」 フロアボール日本代表・高橋由衣

講習会で参加者に楽しくフロアボールを指導する高橋由衣

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 室内で行うホッケー、フロアボールの日本代表として、15歳から世界で戦ってきた高橋由衣(28)。大学卒業後は、さらなる高みを目指して最強国・スウェーデンへ。身長147センチと誰よりも小柄ながら、スピードあふれるプレーで180センチ近い欧州選手と渡り合う。「将来はフロアボールを五輪種目にしたい」と夢は大きい。

 二〇一一年から生活の拠点をスウェーデンに置く。例年、夏の一時帰国は二週間程度だが、今年は六月下旬から八月上旬までと長かった。十二月の世界選手権で前回の十五位からトップ8入りを目指す日本代表の練習に加え、伝道師のごとく各地で普及活動を繰り広げた。

 「スウェーデンの練習方法を学びたいクラブを募集し、今年は五つのクラブを訪れました」。七月二十二日に川崎市内で開いた講習会には、同市のすみよしユニバーサルホッケークラブ(山下孝子代表)の小中学生約三十人と、千葉大学フロアボールクラブが参加した。

 世界選手権でスウェーデンの優勝回数は群を抜く。男子は十一大会中八回、女子は十大会中七回。高橋は「小学生のうちから考えながらプレーしています。中学生になると、私よりもプレーの引き出しが多い」と解説し、具体的な「考えるプレー」を実演。「ディフェンスは、相手のフォワードを(シュートが決めにくい)角度のないところに追いやって」などとアドバイスした。

 伝道師としての高橋の役割は国内にとどまらない。今年二月、国際フロアボール連盟(IFF)のアスリート・コミッション(選手会)の女子メンバー四人の中に選ばれ、IFFの「顔」となった。任期は四年。各国選手の投票で決まるのだが、アジア女子選手の当選は初の快挙だ。

 七月上旬、アジアカップが行われたバンコクに飛び、下旬にポーランドで開かれたワールド・ゲームズ(WG)をPRした。フロアボールが第二のオリンピックと呼ばれるWGで行われた。

 「五輪の公式種目を実現するには、アジアの盛り上がりが欠かせません」。タイ、インド、インドネシア、イラン、シンガポール、フィリピン、韓国、中国の各国代表チームと精力的に、競技の未来を語り合った。

 小学生の時、通っていた児童館にフロアボール日本代表の職員がいて、競技の面白さを知った。中学生になると社会人チームでプレー。十五歳で日本代表に選ばれると、アジア選手権で3ゴールを決め優勝に貢献。翌〇五年世界選手権で八位。今日まで、すべての日本代表戦に出場している。

シュート練習にも熱が入る=いずれも川崎市中原区で

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 「ゴールを決めたときのうれしさは格別。本当に楽しくて、やめようと思ったことは一度もありません」。若くして日本のトップ選手となった高橋は、大学卒業後、スウェーデンでの武者修行という前例のない道を歩み始める。四つの教員免許も取得していたが、「世界一の国でプレーしたい。自分の可能性を広げたい」と、単身渡欧した。

 スウェーデンではサッカーに次ぐ人気スポーツで、トップの一部リーグはテレビ中継もされる。リーグは女子で五部まであり、男子となると九部まで。高橋は「星の数ほどチームがあって驚いた」という。一年目の一一年はストックホルムのチームに入団。二部リーグの二十試合に出場し、20ポイント(12ゴール、8アシスト)を記録。スピードと豊富な運動量で観客を沸かせた。

 複数のチームでキャリアを積み、一六年からはストックホルムの北六百キロメートルに位置するウメオに移住。日本語教師で生計を立てながらの競技生活だ。一部リーグのIBKダーレンに所属。二部リーグの試合に出ながら、一部リーグの選抜メンバー入りを目指している。

 「必ずトップ(一部)リーグのコートに立ちたい。テレビ放送されるような大きな試合で活躍したい」

 (敬称略)

<フロアボール> スティックを使ってプラスチックのボールを相手のゴールに入れる得点競技。アイスホッケーを体育館(フロア)で行うイメージで、コート上は1チーム6人で対戦する。1970年代にスウェーデンで発祥し、フィンランド、スイス、チェコなどでも盛んだ。現在、国際フロアボール連盟には66の国・地域が参加し、世界の競技人口は30万人、愛好家も含めると200万人に上るという。国内競技人口はネオホッケー(フロアボールを簡易的にしたレクリエーションスポーツ)を含め2500人。

<たかはし・ゆい> 6歳からミニホッケーを始め、中学1年の時に社会人チームの神奈川フロアボールクラブで本格的に競技を始める。高校1年、15歳で日本代表に初選出。以来、28歳の現在まで日本代表FWとして活躍。世界選手権は12月のスロバキア大会で連続7度目の出場となる。横浜国立大学卒業後の2011年からは、本場スウェーデンでプレーを続ける。今年2月、国際フロアボール連盟の選手会委員に選ばれ、国際的な普及活動にも取り組んでいる。横浜国立大学大学院在籍。147センチ、55キロ。川崎市出身。

 文・牧田幸夫/写真・安江実

IFFの選手会委員としての初会議の後、身長190センチの委員長(右)(オランダ代表GK)とツーショット。身長差は43センチ=5月、スウェーデン・ベクショーで(本人提供)

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