東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 知られざる世界ランカー > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【知られざる世界ランカー】

五輪へ決意の一投 スポールブール日本代表・豊田想

標的球(手前)を狙って金属製のボールを投げる豊田想=さいたま市西区で

写真

 国内の競技人口が5人だった時期もある超マイナースポーツが、2024年パリ五輪で正式競技になるかもしれない。それがフランス発祥で欧州で人気がある球技「スポールブール」だ。日本不動のエース、豊田想(38)は「オリンピックは憧れ続けた舞台。五輪競技が実現したら、日本もチームを送りメダルを取りたい」と夢を膨らませる。

 二年に一度の世界選手権(男子)が十七日からカサブランカ(モロッコ)で四十二カ国・地域が参加して開かれる。日本からは三選手。監督を兼任する豊田は、公園施設メーカーのコトブキ(東京都港区浜松町)で販売戦略を担当する課長代理。初代表の二人は、清瀬市職員の熊野健(40)、慶応志木高校二年の兼坂俊之介(16)で、競技歴二〜三年で代表の座をつかんだ。

 八大会連続出場となる豊田は、今回四種目にエントリー。七月末にパリ五輪が事実上決まったことを受け「世界大会で結果を残し、スポールブールを日本の多くの人に知ってもらいたい」と意気込む。

 重さ約一キロの真ちゅう製のボールを使う競技は、転がして目標球に近づけたり、投げて標的球に当てることを競う。世界選手権では六種目が行われるが、五輪で採用される可能性があるのが人気種目の「プログレッシブ」だ。

 助走しながら規定のラインの手前から一二・五メートル以上先の標的球を狙ってボールを投げる。そのまま走って折り返し、反対側の標的球を狙う。この繰り返しで、五分間で何球当てられるかを競う。命中した回数が得点だ。

 「同じペースで、いかに速く走り、いかに正確にボールを投げ続けられるかがポイント」。年を重ねるごとにレベルアップを続けた豊田は、三十四歳で迎えた一三年の世界選手権で、各種目で本場欧州のプロ選手と互角に渡り合い、プログレッシブは28点の高得点で十位に食い込んだ。

 だが世界のトップ選手との差はまだ大きい。豊田の持つ日本記録は31点だが、世界の表彰台に立つには40点台が必要。七年後のパリを見据え、「世界選手権の目標は過去最高の八位以上」と、この種目での活躍を誓う。

競技で使うボールを手に笑顔を見せる

写真

 豊田がスポールブールと出合ったのは二十一歳の時。五輪競技になりそうなマイナースポーツを紹介するテレビ番組を見た。「あなたがオリンピック選手になる方法」という内容だった。

 調べてみると、適性の目安は▽八メートル離れたごみ箱に物を高確率で投げ入れられる▽一リットル入りのペットボトルを持って全速力で五分間走り続けられる−。元高校球児の豊田は思った。「野球で鍛えたコントロールと肩の強さ。持久力も自信がある。自分にピッタリの競技」

 始めた翌〇三年に早くもプログレッシブの日本記録(当時)を更新。世界選手権初出場も果たした。〇八年には「目標は世界大会のメダリスト。自分の可能性に挑戦したい」と、当時勤めていた会社を辞め、本場のフランスやイタリアなどで半年余りの武者修行を敢行。力を蓄え、日本選手権九連覇など、第一人者として走り続けてきた。

 一方、マイナースポーツのトップ選手には、普及という「伝道師」の役割が伴う。スポールブールも競技者が減り、競技の存続自体が危ぶまれた時期があった。

 豊田は「〇九年当時は私を含めて五人。一一年頃から毎月講習会を開くなど地道に活動を続け、ようやく七十人になりました」。日本代表では現在、選手の自己負担を少しでも軽減させようと、クラウドファンディングで活動資金を募っている。

 「努力すればオリンピックに行ける」。そう信じて十七年がたった。一〇年に今の会社に再就職したが、平日も勤務前の投球練習を欠かしたことがない。パリは五輪招致レースで〇八年は北京に、一二年はロンドンにと二度続けて敗れたとあって、豊田にとっては待ちに待ったパリ五輪なのだ。ただ七年後は四十五歳。

 「年齢的にはぎりぎり大丈夫。五輪の表彰台を目指します」 (敬称略)

<とよだ・そう> 21歳からスポールブールを始め、2008年には本場フランスとイタリアのクラブチームに留学。世界選手権は17日開幕の17年モロッコ大会を含め、03年から8大会連続で出場。人気種目の「プログレッシブ」で、05年イタリア大会9位、13年アルゼンチン大会10位。日本選手権は9連覇を含む10度優勝。プログレッシブなど3種目の日本記録を持つ。選手育成、普及活動にも力を注ぐ。178センチ、75キロ。さいたま市出身。

<スポールブール> フランス語で「スポール」は「スポーツ」、「ブール」は「ボール」の意味。古代ローマの壁画によく似た競技が描かれていることから「人類最古の球技」との説もある。6種目あり、五輪に採用される可能性がある「プログレッシブ」は、5分間走りながら金属製のボールを投げ、標的球に当たった回数を競う。他にボールを転がして目標球に近付ける種目がある。フランス、イタリアなど欧州で盛んに行われている。国内の競技人口は70人。日本で近年、高齢者を中心に親しまれているペタンクは、スポールブールから派生したスポーツ。

 文・牧田幸夫/写真・圷真一

写真
 

この記事を印刷する

PR情報