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【知られざる世界ランカー】

国内女王、大海原へ スタンドアップパドルボード・佐藤優夏

全日本SUP選手権の3キロレースで2番手以降を大きく引き離す佐藤優夏=新舞子マリンパークで

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 新しいウオータースポーツとして、人気急上昇中のスタンドアップパドルボード(SUP=サップ)。レース競技としても確立されており、国内無敵の女王が佐藤優夏(32)だ。プロとなった今年は海外の大会で飛躍。「来年は世界一を目指す」と意気込む。

 佐藤のキャッチフレーズは「三浦の元気印、Yuka」。どんなに苦しいレースでも、波と風に溶け込み、楽しそうに海面を漕(こ)ぎ続ける。そして最後は誰よりも先に笑顔でゴール。世界の表彰台に挑戦した一年をこう振り返る。

 「世界選手権は目標の3位には届かなかったけど、4位で初の表彰台に立てた。フィジカルは戦えているので、あとはたくさんの経験を積み、細かいスキルを磨きたい。明るく、元気いっぱいをモットーに、これからも前を向いて走り続けたい」

 陸上競技にマラソンから100メートルまであるように、SUPレースの種目もロングディスタンス(基本は18キロ)、テクニカル(3キロ)、スプリント(200メートル)など、持久力が必要な長距離からスピード勝負の短距離まである。

 佐藤は六〜七月のAPPワールドツアー・ドイツ大会で総合4位。日本代表として臨んだ九月のISA世界選手権(デンマーク)では、ロングディスタンス11位、テクニカル7位。スプリントでは表彰台に立てる4位に食い込み、存在感を示した。

 もちろん、国内大会となると、その強さはダントツ。十月の全日本選手権(愛知・新舞子海岸)のロングディスタンス(15キロ)では、早々に二番手以降を大きく引き離し独走態勢を築くと、女子より5分早くスタートした男子を射程に。結局、二十人以上を抜き去って1時間49分57秒でゴール。「レース中は一つでも前の順位でフィニッシュすることだけを考えている」と涼しい顔だ。

 幼い頃、山や川など西多摩の自然を遊び場にして育った。中学、高校時代はバスケットボール部、進学先の体育大学ではラクロス部で活躍。大学卒業後は「海にかかわる仕事がしたい」とサイパンへ渡り、資格を取得。ダイビングインストラクターとなった。

スタート直前の佐藤(左から3人目)。大会に懸ける意気込みがうかがえる

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 SUPとの出合いは二〇一四年、逗子海岸で。友人に誘われて体験してみて、海面を軽やかに走る感覚にすっかり魅了された。三浦市に移住し、三戸浜を練習拠点に、翌一五年からは「何となく」レースに参加。すると、始めて六カ月後の全日本選手権で準優勝。一六年からは本格的に競技と向き合った。

 「ずっとチームスポーツをしていたので、個人競技は新鮮。練習すればするほど成果につながるのは快感」。推進力を得るパドルの漕ぎ方を習得し、ボードを押さえる足の筋肉強化など、時には男子トップ選手の練習に参加して力を付けた。今年に入り、「SUP一本、本気でやってみる」と決意した。

 海外転戦を視野に入れる現在、直面しているのが経済的な問題だ。契約金ありのスポンサーは一社のみ。今年は資金難から、世界ツアー6戦のうち、2戦しか出場できなかった。そのため「世界ランキングも15位」という。海外遠征の資金調達は越えなければならない壁なのだ。

 日本SUP選手会の松本晃一会長(48)は「佐藤選手は日本選手の枠を超えた世界レベルの選手。女子は男子に比べスポンサーが集まりにくいが、その中で結果を出している。競技に専念できる環境が整えば、彼女はもっと強くなる」と話す。

 競技の未来を背負うトップ選手は、後に続く選手の目標でもある。佐藤は「ワールドツアーを全部転戦し、世界で結果を出すことがこれからの目標。最大の目標は世界選手権での優勝。世界一になることです」。持ち前のバイタリティーと明るさで、どんな困難にも挑んでいく。 (敬称略)

笑顔でゴールする佐藤

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<さとう・ゆか> 東京女体大時代はラクロス部で活躍。ダイビングインストラクターとして活動していた2014年にSUPと出合う。15年の全日本選手権で総合準優勝すると、16年は国内主要大会をほぼ総なめにし、17年も圧勝で全日本選手権を制した。プロとなった今年は海外大会に参戦。APPワールドツアー・ドイツ大会では、ロングディスタンスで海外試合初の表彰台となる3位に入り、総合4位。ISA世界戦手権でもスプリントで4位に食い込み、初めて表彰台に立った。163センチ、57キロ。32歳。東京都あきる野市出身。

<SUP(サップ)> ハワイで生まれたウオータースポーツ。サーフボードのような専用ボードに立ち、パドルを漕いで水上を進む。初心者でも始めやすいため近年、愛好者が急増している。波に乗るSUPサーフィンも上級者の間で人気。日本スタンドアップパドルボード協会(SUPA)によると、国内競技人口はこの2年間で約2倍に増え、推定5万人。

 文・牧田幸夫/写真・加藤晃、牧田幸夫

 

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