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【知られざる世界ランカー】

水が舞台「三刀流」 アクアアスリート・平野修也

フィンスイミング短水路日本選手権でビーフィン種目のスタートに立つ平野修也

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 競泳、水辺での救命技術を競うライフセービング、足ひれを着けるフィンスイミング。水を舞台にした三つの競技で国内トップクラスの成績を残す平野修也(なおや)(32)は、自らを「アクアアスリート」と名乗る。一つに専念することが当たり前の日本のスポーツ界で、「複数の競技を並行して行うからこそ、相乗効果が生まれる」と、そのメリットを強調する。

 昨年七月にポーランドで開催されたワールドゲームズ(WG)。オリンピックに採用されていない競技を行う「第二の五輪」で、平野はライフセービング(プール種目)とフィンスイミングの二競技で日本代表となった。複数競技での同時出場は、一九八一年に始まったWG史上初という。

 ライフセービングでは、「金メダルを狙っていた」という4×50メートル障害物リレーで、1分36秒62の世界新記録で圧巻の優勝。水中に設置された二つの柵をくぐりながら50メートルを自由形で泳ぎ、四人でつなぐこの種目で、平野は日本のエースとして第一泳者を託されてトップに立ち、金メダルへの道筋をつけた。「タイムを見て驚いた。世界の舞台で最高の泳ぎができた」

 フィンスイミングでは、両足にそれぞれフィンを着けてクロールで泳ぐビーフィン種目で50メートル6位、100メートル8位。前年の世界選手権に続き「世界のファイナリスト」となった。

 今年は七月にフィンスイミング、十一〜十二月にライフセービングの世界選手権が開催され、ともに表彰台を目指す。

フィンスイミングでも世界の表彰台を目指す=いずれも昨年12月、千葉県国際総合水泳場で

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 高校時代は50メートル自由形でインターハイに出場するなど、自由形の短距離を得意としてきた。国士舘大学を卒業後は、「泳力を人命救助に生かしたい」と東京消防庁の水難救助隊員となり、ライフセービングも開始。一方で、競泳も日本選手権のB決勝(9〜16位)に食い込むことを目標に置いた。

 アクアアスリートへの転機は二〇一三年、フィンスイミングへの参戦だ。「ライフセービングにはフィンを着ける種目があるが、フィンの技術ならフィンスイマーの方が詳しい。それで国内のトップ選手に誘われビーフィンの練習を始めた」。翌年に日本代表に選出されたのを機に、ライフセービングも代表を目指すことに。

 三つの競技を並行して行う利点は何か。平野によると、フィンスイミングは競泳の一・五倍もの速度が出るから水の抵抗に敏感になる。人命救助を想定するライフセービングには、重いマネキン人形を引っ張る種目がある。重りを抱えて泳ぐとバランスが崩れやすいから、当然、バランスに敏感になる。

 「身体がそれらに対応しようと、新たな技術や体の使い方が身に付き、全体のパフォーマンスが向上する。競泳のタイムも縮めた」

 ライフセービングも代表入りした一五年、平野は競技活動に専念するため、東京消防庁を退職した。「よく『どれがメイン?』と聞かれるけど、どれもメイン。全部本気で、また全部がトレーニングでもある」と話す。

 競泳と比べれば、他の二つはマイナー競技。結局、メジャー競技で大成しなかった人がやっている−との見方はあるだろう。それを言われるのが嫌だから、競泳もしつこく続ける。昨年一月にはマスターズの800メートルリレー(四人の年齢の合計が百二十〜百五十九歳の部門)で世界新記録も出した。「今でも日本選手権で競泳専門のスイマーに一泡吹かせたいと思っている」と意欲満々なのだ。

 複数の競技を行う選手を平野は「マルチアスリート」と呼んで推奨する。例えば、サッカーとフットサル、バレーボールとビーチバレーも並行して続けることで、ともにレベルアップすると考える。

昨年のワールドゲームズのライフセービング・4×50メートル障害物リレーで世界新記録で優勝した平野修也(右)ら日本チーム=本人提供

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 平昌(ピョンチャン)五輪ではスピードスケート女子1000メートルで優勝したオランダのヨリン・テルモルスが、ショートトラックの3000メートルリレーでも銅メダルを獲得し、“二刀流メダリスト”として話題になった。

 「日本は一つの競技を続けることが良いとされてきたが、マルチアスリートが増えることで、日本のスポーツ文化も変わると思う。新たな風を吹き込みたい」

 (敬称略)

<ひらの・なおや> 競泳、ライフセービング、フィンスイミングの3競技を専門とするマルチアスリート。水泳をベースにしていることから「アクアアスリート」の肩書で活動している。ライフセービングの50メートルマネキンキャリー30秒32、フィンスイミングのCMAS100メートルビーフィン43秒73など、複数の種目の日本記録保持者。昨年のワールドゲームズでは、この2競技でダブル出場を果たし、ライフセービングの4×50メートル障害物リレーを世界新記録で優勝した。183センチ、85キロ。多摩市出身。32歳。

 文、写真・牧田幸夫

 

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