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【知られざる世界ランカー】

ヒマラヤ8000メートル級3座連続登頂へ ヨガインストラクター&登山ガイド・松下沙織

昨年11月、ヒマラヤのアマダブラムに登頂する松下(c)adventureguides

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 ヨガインストラクターで登山ガイドの松下沙織(35)=神奈川県大和市出身=が四月から、ヒマラヤ八千メートル級の三座連続登頂に挑む。成功すれば日本人女性初の快挙となる。酸素が平地の三分の一しかなく「デスゾーン」と呼ばれる過酷な環境を、ヨガなどで培った健康法で克服し、ノウハウを多くの人に伝えたいという。

 計画によると、登山家で国際山岳ガイドの近藤謙司さんの公募隊に参加し、四月十日にネパールへ出発。エベレスト(八、八四八メートル)とローツェ(八、五一六メートル)を連続登頂する。五月下旬にいったん帰国した後、六月にパキスタンに入り、現地の公募隊に加わってブロードピーク(八、〇四七メートル)に挑む。

 松下は昨年十一月には、ネパールのアマダブラム(六、八五六メートル)などヒマラヤの六千メートル級の三座連続登頂を果たした。今回の遠征の目的の一つは「近藤さんから八千メートル級の登山技術を学び、自身のスキルを高めること」だ。

 そしてもう一つ。「誰にでもできるヨガの健康法で高所を克服したい。登頂に成功すれば、普通の女性でも過酷な環境に挑戦できる健康体になる方法を伝えられる」と強調する。

 登山家は屈強で体力、持久力に優れるイメージが強いが、その意味では松下は異色だ。幼少期はアトピーに苦しみ、疲れやすく、持久力もそれほどなかったという。大学卒業後は登山専門の旅行会社に四年間勤務。国内外で登山やハイキングの経験を積み、プロガイドとしての基盤を固めた。

松下が企画するヨガを取り入れた登山やハイキングはリピーターも多い(本人提供)

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 ガイドとして高みを目指す転機となったのは、二〇一一年から参加したヨーロッパアルプスでの国際山岳ガイドの研修だ。一五年までにモンブラン(四、八一〇メートル)、マッターホルン(四、四七八メートル)など名峰七座に登頂した。

 周りは体力自慢の人ばかりで、研修についていくのがやっとの中、生き残るために習得したのがヨガだった。一三年は国内で、一四年はインドに渡り、各一カ月間集中して呼吸法などヨガの奥義を学んだ。

 身体を酷使する登山ではなく、心身のメンテナンスとケアをしながら登る。松下は「ヨガやさまざまな自然療法を取り入れたことで、自然のパワーをもらいながら、生命エネルギーを補うことができる。エネルギーを調整しながら、ゆっくりと高度に順応できるようになった」と説明する。

 登山を始めたのは七歳のころ。幼なじみの父で、現在は大和市の私立聖セシリア小学校校長を務める渡辺勝之氏に導かれ、丹沢(神奈川県)のハイキングを経験すると、中学一年で国内第二の高峰、北岳(山梨県)に登頂し、眼下に広がる絶景に衝撃を受けた。雲海に山並みが浮かび、朝日がオレンジ色に照らす。「想像を超える自然の力。多くの人にこの景色を見てほしいと思った」。登山ガイドを目指す原体験となった。

 ガイドとして、これまでに年間二百〜五百人ほどを案内してきた。特にヨガを取り入れたハイキングや登山は好評でリピーターも多い。体力に自信がない初心者でも、その人の潜在能力を引き出し、登頂に導くのが松下流だ。疲れた体を呼吸法や瞑想(めいそう)、ポーズでほぐし、自然治癒力を高める。「松下さんのガイドだから登頂できた」と言われるのが何よりうれしい。

連続登頂への挑戦を前に抱負を語る松下沙織=今年2月、千代田区で

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 「これまでも自己管理を徹底させて登山を成功させてきた」と松下。今回のヒマラヤ八千メートル級の三座連続挑戦でも、「『命を懸けて』ではなく、命は確実に持って帰ってくる」と退く勇気も強調する。

 肩書は「登山ガイド」でも、松下は世界の高峰に挑むアスリートであり、ヨガ療法士の資格を持つセラピストでもある。「身体能力を高めるために実践してきた健康法を社会に還元し、病気を未然に防ぐ活動にも力を入れたい。これも私の挑戦」 (敬称略)

<まつした・さおり> 幼少期より登山を始め、東京農業大で林業を学んだ後、登山専門の旅行会社を経て28歳で登山ガイドに。ヨガインストラクター、ヨガ療法士の資格も持つ。160センチ、49キロ。35歳。4月からのヒマラヤ8000メートル級3座連続登頂の最新情報などは、松下沙織サポーターズクラブの公式サイト(同クラブ名で検索)で。

 文・牧田幸夫/写真・松崎浩一

 

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