東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 知られざる世界ランカー > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【知られざる世界ランカー】

カップに満々 プロの誇り スポーツスタッキング・瀬尾剛

スポーツスタッキングを子どもに教える瀬尾剛さん(左)=横浜市港北区の綱島カルチャーセンターで

写真

 カップをピラミッド状に積み上げ、崩すようにして元の状態に戻す。その速さを競うのが「スポーツスタッキング」だ。第一人者の瀬尾剛(29)は、世界でただ一人のプロ選手。「子どもから高齢者まで誰もが楽しめ、脳トレにもなる」と日々、普及活動に奔走する。

 横浜市港北区の綱島カルチャーセンターで毎月第1、第3水曜日の夜に開かれるスポーツスタッキング講座は、瀬尾が7年前から教える人気講座だ。「小学生が世界一になれる競技」とあって、生徒は子どもたち。練習で自己ベストを出すたびに、歓声が沸き上がる。

 競技の基本は3種目。9個のカップを使って、3個ずつの山を三つつくる「3・3・3」。ほか2種目は12個を使い、真ん中が6個の山になるのが「3・6・3」。花形種目のサイクルは「3・6・3」→「6・6」→「1・10・1」の順に変形させていく。最初の「3・6・3」をいったんスタートの状態に戻して6個の山二つにし、さらに動かして中央を10個にする。集中しないと、途中でカップが飛び散るなど、うまく積み上がらない。

 瀬尾によれば、初心者の目標は「3・3・3で5秒、3・6・3で7秒、サイクルなら20秒」。世界記録は順に1秒335、1秒746、4秒813だ。トップ選手の正確で素早い指の動きはまさに神業。あっという間に終わり、タイム差が出にくいため、1000分の1秒まで計測する。

 スポーツスタッキングは1985年ごろに米国で生まれた。日本では普及して間もない2006年に初の日本大会が開かれ、その初代王者が当時17歳だった瀬尾だ。3連覇し、09年には世界大会でも総合優勝。現在はマスターズ部門(25〜59歳)の世界トップ選手として活躍するが、持っていた日本記録は中学生ら若い世代によって塗り替えられた。世界的に見ても10代前半が「アスリート」として最も強い。

 瀬尾は「サイクルの世界記録が7秒台のころ、『6秒台は人間には出せないよね』と話していたが、今では4秒台に突入した」と驚きを隠さない。

 スポーツスタッキングとの出合いは中学生の時。物を空中に投げたりキャッチしたりを繰り返すジャグリングの道具を買いに行った店に、体験コーナーがあった。「短時間で自分のタイムがどんどん短くなって楽しくなった。熱中して、気付けば2時間たっていた」。その場で道具を買い、練習開始。独学でトップ選手へと上り詰めた。

 大学卒業後はスポーツクラブのインストラクターに就職したが、「このスポーツを広めるのは今しかできない」と7カ月で退職。児童館を回るなど普及活動に本腰を入れた。「多くの人に生で見てほしい」と商業施設などでのパフォーマンス活動も行う。軌道に乗り、「世界でただ一人、スポーツスタッキングを職業にした」と、胸を張って言えるまでになった。

 子どもたちに教える中で、集中力や反射神経を高める効果があると確信した。父母らから「この子が一つのことに1、2時間も集中するなんて今までなかった」という声も届くようになった。高齢者もはまりやすいといい、認知症予防などにも役立ちそうだ。

 「楽しいだけでなく、身体にもプラスになる。日本中に広めたい」。競技と自身の可能性を信じて、前例のない道を突き進む。 (敬称略)

<せお・つよし> スポーツスタッキングの初代日本王者。2014年は世界大会、アジア大会、日本大会の3大会でマスターズ部門個人総合優勝を成し遂げた。17年もアジア大会を制した。街頭ではパフォーマー「SEOPPI(セオッピ)」として活動。横浜市在住。29歳。

 文・牧田幸夫/写真・朝倉豊

写真
 

この記事を印刷する

PR情報