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【知られざる世界ランカー】

大車輪の活躍 一輪車競技・高田朝日

スタート練習を繰り返す高田朝日。短距離からフルマラソンまで3種目の世界記録を持つ=大田区で

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 一輪車が全国の小学校の約9割に普及している日本は、まれに見る「一輪車大国」だという。その競技の女王が高田朝日(19)=川崎渡田(わたりだ)一輪車クラブ所属=だ。速さを競う「レース」と、技術と表現力で魅了する「演技」の両方で、世界トップの実力を誇る。「もっともっと一輪車の魅力を伝えたい」と、風のように駆け抜け、華麗に舞う−。

 一輪車の世界大会「UNICON(ユニコン)」は隔年で開催され、毎回、世界二十数カ国から一千人以上が参加する。この祭典で高田は、中学一年生で出場した二〇一二年大会(イタリア)からトラックレース部門の女子総合王者だ。

 今年七〜八月に韓国で開かれた大会では、出場六種目のうち百メートル、四百メートル、五十メートル片足走行の三種目で優勝。

 四百メートルの優勝タイム57秒021は、計測機器の関係で公認されなかったものの、一二年大会で自身がマークした世界記録を上回った。八百メートルなど他の三種目はいずれも四位をキープし、見事に総合四連覇を成し遂げた。

 静岡県藤枝市出身。今春、日本体育大に進学したのを機に、小学生時代から所属した「UC藤枝」から川崎市内のクラブに移った。

 「ライバルだった仲間との練習が減り、一人での練習が増えた」と一抹の不安もあったが、世界大会直前の全日本一輪車競技会トラックレース部門で総合四連覇を果たすと、その勢いにも乗って世界も制した。

 さらに、世界大会の演技部門では、一学年下の妹の七海(ななみ)と組んだペアで念願の優勝を果たした。「得意なのはレースだけど、好きなのは音楽に合わせて踊る演技。前回、妹とのペアは世界三位だったので本当にうれしい」と喜ぶ。

 演技の基本的な技はスピン、ジャンプはじめ、一輪車上で足を上げるY字、I字、ビールマンなどフィギュアスケートに似ている。演技時間は四分間で、技の難易度や表現力、構成・振り付けなどが審査される。

 姉妹の見せ場は、曲の変わり目で一瞬のうちに衣装を変える「早着替え」と、一台に二人が乗って行う最後の「高速スピン」。「楽しんで踊っていることが伝わりますように。観客の皆さんも盛り上がってほしい。そう思いながら演技しました」

◆レースと演技 二刀流で頂点

妹とのペアで演技でも世界一になった=川崎市で

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 一輪車を始めたのは小学三年。先に始めた妹の楽しそうな姿に触発された。クラブの方針で最初からレースと演技を並行して行い、「毎日二時間、休日は一日中乗っていた」というほどの練習でぐんぐん上達した。小学六年で全日本競技会(小学生の部)でレース、演技ともに初優勝。中学生になった翌年、世界大会に出場すると、四百メートルと八百メートルのレース二種目で世界記録を打ち立てた。

 レースと演技で世界の頂に立つ高田は「マイナー競技だから、欲張って両方やらせてもらえる」と謙遜するが、関係者は「世界的に見てもすごいこと」と口をそろえる。アイススケートに例えるなら、スピードとフィギュアの両方で世界の表彰台に上がるようなものだ。

 演技の元世界王者で、世界的サーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の舞台経験がある下山和大(かずひろ)(日本一輪車協会事務局次長)は、高田を小学六年の頃から見ている。「始めて三年余りで全日本のタイトルを取るのは快挙。本当に努力家で黙々と練習するタイプ。内に秘めた闘志がある」と話す。

 一輪車は全国の多くの小学生が体験しており、潜在的な競技人口は多い。高田はトップ選手の役割として、今後は競技の普及にも努めたいという。「レースで誰よりも前を走るのは気持ちが良い。踊りは単純に楽しいし、歴史が浅い分、新しい技を創り上げていく面白さがある」と笑顔で語る。

 アイススケートのような誰もが知る人気スポーツにしたい−。夢の実現へ、女王の挑戦は続く。 (敬称略)

<日本での一輪車の歴史> 公益社団法人の日本一輪車協会専務理事、菅野耕自さんによると、1910年に曲芸として米国から紹介された。60年代後半からスポーツとして広がり、78年に協会の前身の任意団体が発足。81年に協会が「体力つくり推進校」などに寄贈を始めた。89年の学習指導要領改定時に一輪車が教材に例示され、導入する小学校が増加。協会では毎年約2000台の寄贈を続けており、現在、全国の小学校の約9割に普及したという。

 競技のレース種目は短距離からマラソンまで。採点競技の演技はソロ、ペア、グループなどがある。国内の競技人口は幼児から70歳代まで約1万人。

<たかだ・あさひ> 今年の世界一輪車大会のトラックレース部門で女子総合4連覇。演技部門でも妹の七海とのペアで世界一。100メートル13秒257、400メートル57秒625、フルマラソン1時間47分18秒のレース3種目の世界記録(国際一輪車連盟公認)保持者。100メートルは16年の全日本競技会で世界記録を上回る12秒80の日本記録を樹立。157センチ、49キロ。19歳。

 文・牧田幸夫/写真・岩本旭人

 

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