東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > スポーツのしおり > 記事

ここから本文
スポーツのしおり

(1)ラインのゆくえ 達人の極意は見えるか

写真

 スポーツの世界では、時に達人の域に達する人がいる。「ボールが止まって見えた」とはプロ野球巨人の大打者、川上哲治さんの言だが、こちらもなかなかのものだ。

 「ピンチになると、外角低めに線というかラインが見えたんだ。投げるとき、指先からすーっと伸びてね。困ったら、そのラインにボールを置いてあげればよかった」

 巨人のエースとして9連覇に貢献した堀内恒夫さんの言葉である。

 堀内さんは1966年に巨人に入団、新人でいきなり16勝を記録した。自由奔放な言動から付けられた異名は「悪太郎」。通算203勝を挙げた名投手だが、晩年は「投げるべきラインが見える」域に達したそうだ。

 堀内さんが巨人のコーチ時代、遠征先の宿舎でお茶をごちそうになりながら、この話を聞いた。実は自慢話ではなく、後輩たちへの苦言。「今の若い投手は昔ほど外角低めを大事にしていないんじゃないか。基本をおろそかにしたら勝てないよ」

 野球界ではよく「外角低めが投手の基本」という。なぜか。それは外角低めが打者の目から最も遠く離れた場所で、バットコントロールのミスを引き出しやすいからだ。達人の極意は、シンプルな原理に基づいている。

 プロ野球は春季キャンプ真っ盛り。勝ちを知る投手ほど、外角低めを丹念に練習する。投げて、投げて、感覚を体に刻み込ませる。LINEといえば携帯電話を指す時代だが、達人が描くこちらのラインも捨てがたい。

 文・谷野哲郎 デザイン・高橋達郎 紙面構成・甲斐毅

 

この記事を印刷する

PR情報

記事一覧



ピックアップ
Recommended by