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スポーツのしおり

(2)星を継ぐもの [背負う] 追いつづける生き方

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 「背負う」という言葉には、どうしても悲壮感が漂う。だが、この人が言うと、少し違って聞こえてくるから不思議だ。「この番号を背負うと彼の魂を感じる。あの人が後押ししてくれている。そんな強い気持ちを感じます」。サッカーJ1・松本山雅FCの田中隼磨選手は話す。

 田中選手の背番号は「3」。昨年、名古屋から移籍した際、元日本代表の松田直樹さんが付けていた番号を引き継いだ。田中選手にとって、2011年に不慮の事故で亡くなった松田さんは横浜M時代の先輩であり、目標としたプレーヤー。背番号だけでなく、その遺志を、魂を受け継いで、戦おうとしている。

 2人にとって、今日は特別な日だ。松本は7日、初めてJ1の舞台に挑む。思い出すのは、まだ松本がJ2より下の日本フットボールリーグに所属していたころ。松田さんは「必ずJ2に上がる。その上にも絶対に行く」と目を輝かせていた。失礼ながら、あのときは夢物語だと思ったが、彼の思いは彼の死後も生き続けた。目標となってチームを支えた。「3」を背負うのはさぞ重いことだろう。しかし、田中選手は「本当の戦いはこれからだから」と松田さんの思いを代弁した。

 言葉遊びではないが、「背負う」は「背追う」と書けないか。重責を背負い込むのではなく、あこがれのスターの背中を追いかける生き方なら、前を向ける。「自分が長野を盛り上げたい」。そう言って笑った松田さんはもういない。だが、その星を継ぐものが松本にはいる。

 文・谷野哲郎  写真左・戸田泰雅  デザイン・高橋達郎  紙面構成・甲斐毅

 

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