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スポーツのしおり

(13)「魔法使いの足し算」 メジャー通算3000安打へあと65

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 あと「65」である。米大リーグ・マーリンズのイチロー外野手(42)があと65本で、殿堂入りの目安とされる「メジャー通算3000安打」に到達する。米球界史上30人目。日本人では初めての偉業だ。

 これまで米国で放った安打は2935。どんな難しい球もヒットにすることから、現地では「Wizard(魔法使い)」とも呼ばれる。昨季は打率2割2分9厘、91安打と苦戦したが、今季は必ず達成してくれることだろう。

 イチローといえば、打席でバットを立てるルーティンが有名だが、実はそれが試合後から始まっていることは、あまり知られていない。ロッカールームで一人静かにグラブを磨く。「そこから翌日の試合が始まる」のだという。結果には相応の理由があるのだと知った。

 彼がまだプロ野球オリックスにいた時代。華麗なバットさばきに何度も見とれた。そんな彼をして、「打てば打つほど、分かれば分かるほど、難しくなる」といわしめるのだから、野球は奥深い。

 打撃とは何だろう。以前、巨人で長年4番を務めた原辰徳氏に聞いたことがある。答えは「泡のようなもの」。続けて「つかんだと思ったら、もう消えている」。150キロの球がマウンドから打席に届くまで、約0.4秒。奇跡のような反応速度で安打を放ち続けるイチローはやはり、われわれの知らない魔術を使っているとしか思えない。

 メジャー16年目を迎える孤高の打者は、魔法の秘密について、掛け算ではなく足し算で生きることと説く。「小さなことを積み重ねることでしか、目標を達成したり、夢をつかんだりすることはできない」。今季はあと43本で、ピート・ローズ氏の持つ大リーグ通算最多記録4256安打にも日米通算で並ぶ。私たちはまだまだイチローから学ぶことがある。

 文・谷野哲郎 写真・共同 デザイン・高橋達郎

 

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