東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > スポーツのしおり > 記事

ここから本文
スポーツのしおり

(17)「僕の登り方」 道は、ひとつじゃないから

写真

 一歩一歩、道を踏み締めながら歩く。酸素は薄く、寒さは容赦なく体力を奪うが、それでも青木達哉(31)は「こんなに楽しいものはない」という。どこまでも続く雪と氷と岩の世界。前を見て、上を見上げて、登山家は胸を躍らせる。

 これまで青木は世界に名だたる山々を登攀(とうはん)してきた。21歳だった2006年、世界第2の高さを誇り、急峻(きゅうしゅん)さや気象条件からエベレストよりも登頂が難しいとされるK2(8611メートル)を世界最年少で登頂。その6年後には難峰キャシャール(6770メートル)を制覇した。

 こだわってきたのは、高さよりも難しさ。例えば、キャシャールはナイフのようにとがった形状で数々の登山家を阻んできた剣山中の剣山。その中でも未踏破だった南ピラー(柱の意味)を花谷泰広、馬目(まのめ)弘仁と3人で制した。功績は世界に認められ、翌年、登山家のアカデミー賞と言われる「ピオレドール賞」をともに受賞した。

 青木が何よりも好きなのは、頂への道を思い描くときだという。「山にはいくつも登り方がある。どれが正解とかはないが、誰も登ったことがなく、ここから登れたら気分がいいというルートがある。僕はそんなルートを登りたい」

 登山はよく人生に例えられる。それはどんな山に登ったかではなく、どのような道を選んだかが問われているからだと思う。今年から8月11日は「山の日」となった。新たな祝日を記念して山男を書きたくなった。青木の言葉は豊かな滋味に富む。

「引き返したり、回り道したり、途中で全く違うルートを見つけることもある。道はひとつじゃない」

 文・谷野哲郎/写真提供・青木達哉/デザイン・高橋達郎

 

この記事を印刷する

PR情報

記事一覧



ピックアップ
Recommended by