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スポーツのしおり

(18)「イチニツイテ」 一つのゴールは終わりではない。また次のスタートの始まりでもある。

写真

 8人の走者が横一列になってゴールに飛び込んでくる。雨にぬれたトラックを踏みならし、懸命に駆けてくる彼らはまるで宙を飛んでいるように見える。写真は6月に行われた陸上の日本選手権。男子100メートル決勝のゴールシーンだ。

 よーいドンからおよそ10秒間のドラマはケンブリッジ飛鳥が制した。2位は山県亮太、3位は桐生祥秀。この写真では見分けが付かないほどのわずかな差が勝敗を分けたと思うと、勝負の厳しさをあらためて思い知らされた。

 日本人初の9秒台に最も近いと言われる桐生は「悔しい」と泣いた。優勝を公言していた山県はレース後、言葉を失った。それでも3人とも五輪に出場ができる。より大きな舞台で決着を付けることができる。思う存分、走ればいい。

 一つのゴールは終わりではない。また次のスタートの始まりでもある。例えば、6位に終わり、リオへの切符を逃した馬場友也は、「26歳で日本選手権入賞は素直にうれしい。まだまだ気持ちは若手なので頑張る」とツイッターでさらなる挑戦を誓った。

 これまでインターハイ、インカレは準決勝止まりだったという遅咲きの馬場だが、ゴールの瞬間、自分との差を刻み込もうと1位を凝視している。いつかは自分が―。次こそは―。スタートラインに立つ意志がある限り、何度でもレースは続いていく。

 時間や距離や高さ。陸上はその見えない強さを数字にするスポーツだと聞く。わずかな数字を伸ばすために、どれだけの努力を積み重ねるのだろう。あと3週間でリオ五輪が開幕する。コンマ何秒に隠された強さを感じたい。

     ◇

 写真は左から、大瀬戸一馬10秒41、長田拓也10秒45、桐生祥秀10秒31、ケンブリッジ飛鳥10秒16、山県亮太10秒17、高橋周治10秒49、九鬼巧10秒53、馬場友也10秒48

 文・谷野哲郎/写真・佐藤哲紀/デザイン・高橋達郎

 

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