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スポーツのしおり

(25)「神は細部に宿る」 雪辱

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 もうあんな思いはしたくない。ノルディックスキー・ジャンプの高梨沙羅(20)=クラレ=が雪辱の日を待っている。平昌五輪まであと1年。女子ジャンプのエースは今、「良い内容のあとに良い結果がついてくる」と自身を鍛えながら、先を見つめている。

 17歳で挑んだソチ五輪は独特な雰囲気にのまれて4位。期待されながら実力を発揮できなかった。「自分で考えていることと体がうまくかみ合わなかった」。同じ轍(てつ)は踏めないと実戦を重ね、自分の飛び方を追求してきた。

 実は繊細さが要求される競技である。ジャンプ台から滑り降りる時速は約90キロ。天候や風向きは刻々と変わる。そんな状況で助走の強さや踏み切りのタイミング、飛翔の美しさなどをベストの形に合わせなければならない。この能力が高梨はずぬけている。

 こんな話がある。ワールドカップ(W杯)通算50勝目を挙げたときのこと。スタートゲートに座る際、わずかに後ろに傾いていた姿勢を修正したのだという。「ソチ五輪もそうだったけど、座っているときから兆候があったので意識して」。微差を突き詰めてつかんだ勝利だった。

 「神は細部に宿る」という言葉がある。建築家ファン・デル・ローエの言葉とも、美術史家ヴァールブルクの言葉ともいわれる名言は「細かいこだわりや妥協を許さない姿勢が、全体の完成度を決める」と解釈される。芸術もスポーツも、突き詰めれば同じ意識に到達するのかもしれない。

 白雪の舞台で戦う高梨。雪は「すす(ぐ)」とも読み、負けや失敗を洗い清めるという意味から「雪辱」という言葉が生まれた。五輪の借りは五輪で返す。ソチのリターンマッチは1年後にやってくる。高梨には雪がよく似合う。

 文・谷野哲郎/写真・潟沼義樹、共同/デザイン・高橋達郎

 

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