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スポーツのしおり

(26)「急がば回れ」 開花のころ

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早熟の天才と言われた少女が、ようやく大きな花を咲かそうとしている。2月に行われた冬季アジア大会。スピードスケート女子の高木美帆(22)=日体大=は「少しずつだけど、滑れるようになってきたのかな」と笑った。

 直前に体調を崩し、調整に苦しみながらも、「直線で力まなくても、進んでいける感覚があった」。1500メートル、3000メートル、マススタートと3個の金メダルを獲得。小平奈緒とともに日本の二枚看板になりつつある。

 彼女が脚光を浴びたのは、2010年のバンクーバー五輪。この競技で初めて中学生の日本代表になり、注目を集めた。しかし、1000メートルで35位など、失意のまま終了。14年のソチ五輪では代表から落選した。思うような結果を残せない日々が続いた。

 それでも焦らず、試行錯誤を続けながら、体を強化してきた。磨いたのは持久力とカーブで氷をつかまえる技術。あれから7年。今では複数のメダルが期待されるオールラウンダーに成長した。

 スピードスケートは一周400メートルのリンクを周回して、タイムを競う。100分の1秒を争うシビアな競技に近道はないと、大先輩の小平は語る。「一つ一つ、レースの反省をしながら、改善しての繰り返し」。ならば高木は、いくつの反省と改善を重ねたのだろう。一つずつ一つずつ。急がば回れとはよくいったものだ。

 誰にだって、失敗や挫折で回り道するときはある。そのときに過去の自分と対峙(たいじ)できたのなら、人は強くなれる。高木は「積み重ねることで、自分の力を蓄積できているのかな」。冬の厳しい寒さがあってこそ、春にきれいな花が咲くという。4日からは世界選手権が始まる。来年は平昌五輪が待つ。開花の春は、まもなくだ。

 文・谷野哲郎/写真・田中久雄、共同/デザイン・高橋達郎

 

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