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スポーツのしおり

(30)「小さな大志」 短所は長所

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 スポーツでは体格で劣ることがハンディとなるケースが多い。だが、サッカーJ1・柏のMF中川寛斗は、そうではないと言い切る。首位争いを演じるチームで存在感を示す22歳は「この身長でも、活躍できるところを見せたい」と力強く話す。

 身長は155センチ。平均身長が177・5センチという現役Jリーガーの中で、最も身長が低い。失礼ながら、昨年度の13歳女子中学生の平均が154・8センチ(文科省発表)というから、ほぼ同じだ。

 しかし、ひとたびピッチに出ると、類いまれな輝きを放つ。DFの間をすり抜けて得点を奪えば、果敢な守備で相手に詰め寄り、ミスを誘う。とにかく走る独自のスタイルでチームに貢献している。

 小学6年生で身長が127センチと平均より約20センチ低かった。心配した両親が医者に相談すると、「150センチ以上伸びない」と言われた。医学的な治療を勧められたが、中川はそうしなかった。「逆にチャンスと考えた。身長の低いJリーガーを探して、当時は150センチ台がいなかった。だったら自分がなろうと考えた」

 必死に練習して、あるとき気付いたという。小柄な体は接触プレーに不利な半面、相手の視界から消えやすかったり、狭い空間に入りやすいということを。中川はパスの精度や位置取り、素早い動き出しに磨きを掛けた。やれることを突き詰めた。「スポーツに限らず、有利なこと、不利なことはある。でも、それは自分の気持ち次第。小さいからこそ、自分ができることを考えられる」と今季の3得点と成長に結び付けた。

 神様は残酷だ。体格も才能も平等には与えない。しかし、現実を受け入れ、自分にしかできないことを探すことができたのなら、短所は長所に変わる。「同じような背の低い子どもたちの目標になりたい。世界中の子ども、日本中の子どもに尊敬されるプレーヤーになりたい」。小さな選手の大きな志である。

 文・谷野哲郎/写真・岩本旭人/デザイン・高橋達郎

 

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