東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > スポーツのしおり > 記事

ここから本文
スポーツのしおり

(31)「行こう わたしが 進む道」 自分らしく

写真

 フーッと息をついて、胸にある思いを吐き出した。「自分が頑張っても『親のすごさを受け継いでいるんだね』と、すぐそこに結び付けられる。それがすごく嫌でした」

 藤本愛妃(東京医療保健大)。19歳。父俊彦さんは元オリックスのプロ野球選手。母美加さん(旧姓山内)はバルセロナ、アトランタ両五輪代表のバレーボール選手。

 幼いころは母に憧れていた。しかし、小学2年の時、人数合わせで入ったバスケットボールでシュートを決めた瞬間、楽しさを覚える。「私はバスケやりたいな」。わが道の第一歩。父も母も快く受け入れてくれた。「好きなことをやればいいんだよ」。その言葉が心にじんと響いた。

 U―16(16歳以下)日本代表に選ばれたころだった。夕食後の一家だんらん。テレビに五輪の一場面が映る。「ママ、ここに出たんでしょ。どんな気持ちだった?」。「心臓が飛び出そうになったなあ。チャンスがあるなら経験した方がいいよ」。この会話でゴールが決まった。道は違うが、目指すは母が立ったあの舞台。

 受け継いだものがある。父からは負けず嫌いの性格。母からは179センチの長身。だけど、自身が大切にするのは努力の積み重ね。誰もいないコートで黙々と練習していると落ち着く。

 「親の印象なのか『五輪行くだろう』と簡単に思われる。よく比べられるけど、母はずっと成功してきた選手。私は違う。五輪はまだ遠い」

 人は比べるのが好きらしい。ゴールは同じ五輪。わが道は一歩一歩。それでいい。バスケットボールを手にして、前を見つめた。その目に「私は私」の思いが宿る。

 文・森合正範/写真・池田まみ、月刊バレーボール提供/デザイン・高橋達郎

 

この記事を印刷する

PR情報

記事一覧