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スポーツのしおり

(37)「フレッシュな気持ち 初心を胸に」 期待と不安

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 入学や就職、何かと環境が変わる4月。期待と不安が交錯している人が多いのではないか。

 ひと足先に新生活を送っているのはパラ陸上、アイススレッジスピードレースで夏冬合わせて7度のパラリンピックに出場した土田和歌子(八千代工業)。1月に車いすマラソンからパラトライアスロンへの転向を表明した。

 「もちろん不安だらけです。でも、スキルアップして壁を乗り越えたい。自分の可能性を広げたい。強い目的意識とワクワク感があるんです。それは新生活だからこそ味わえる気持ち」。今しか感じられない、初心を大切にする。

 転向のきっかけは一昨年11月。ぜんそくを発症し、治療のために水泳を始めた。トレーニングの一環として昨年9月のパラトライアスロン世界選手権に挑む。だが、海の低い水温が原因で過呼吸となり、泳ぎ出せない。スタートさえできずに棄権。海を見ながら「この競技は二度とできないかも」と落胆した。

 直面した高い壁。悔しさが競技への思いを強めていく。「越えたい」と心に芽生え、「克服できたら楽しいのでは」と真剣に考えるようになった。課題や悩みなど不安材料をノートに書き出し、頭の中を整理する。43歳。新たなスタートを切った。

 レース中、スイムからバイク、バイクからランへの転換は容易ではない。3種目それぞれで必要な身体能力も異なる。「この言葉がふさわしくないかもしれないけど、私にとっては障害者であることを感じる競技です。自分の障害を受け入れて、どう工夫すれば克服できるのか。それを考えるのが面白いんです」

 これまで以上に過酷な競技だ。今後、挫折を味わうことがあるかもしれない。陸上で行き詰まった時には初心を思い出してきた。「数年後、必ずフレッシュな今の気持ちと目的意識を思い返す時が来る。これをきちんと記憶しておきたい」

 新生活の始まり。スタート前の希望も、感じている不安も、今だけの大切なもの。いつでも取り出せるように、しっかりと胸にしまっておこう。

 文・森合正範/写真・北田美和子、田中久雄、藤原進一、梅田竜一/デザイン・高橋達郎

 

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