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スポーツのしおり

(39)#WhyWeSport 海を越える友情

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 絆は国境を超える。その瞬間、清々しい風が吹く。平昌冬季五輪スピードスケート女子、優勝した小平奈緒はレース直後に銀メダルの李相花(韓国)をそっと抱き寄せた。1984年ロサンゼルス五輪柔道男子、モハメド・ラシュワン(エジプト)は山下泰裕の痛めた右脚を狙わなかった。根底にはライバルへの敬意とフェアプレー精神がある。

 2年前のリオデジャネイロ五輪陸上男子50キロ競歩。荒井広宙(自衛隊)とエバン・ダンフィー(カナダ)はレース終盤に接触した。4位でゴールしたダンフィーのカナダチームは「妨害だ」と抗議し、3位の荒井は一時失格となった。

 順位が確定するまでの間、二人はドーピング検査の部屋で鉢合わせした。荒井は戸惑いながらも歩み寄る。するとダンフィーが言った。

 「僕は何とも思っていないんだ。周囲が騒いでしまって。揉め事になってごめん」

 清々しい風が吹く。荒井はもう結果なんてどうでもいいと思った。「僕たちは全力で戦った仲間。意図的な接触ではない、と二人は分かり合えていた。何よりそれがうれしかった」。紆余曲折を経て、銅メダルは荒井、4位ダンフィーと確定した。

 閉会式直前、選手でごった返す入場口。荒井は必死にダンフィーを探した。「次も頑張ろうぜ」。互いの国旗を掲げ、笑顔で写真に収まる。そのツーショットはダンフィーのツイッターに投稿された。#WhyWeSport(スポーツをする理由)と一文を添えて。

 青、黄、黒、緑、赤の五つの輪が重なるオリンピックのマーク。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの五大陸の団結を意味する。小平と李。山下とラシュワン。荒井とダンフィー。勝利を目指して全力で戦い抜き、互いを認め、輪のように心が重なり合った。

 #WhyWeSport  荒井なりの答えがある。ツイッターとフェイスブックのアイコンは銅メダルを掲げるシーンではない。互いの国旗を手に、ダンフィーとともに笑っている。2年後、東京に清々しい風が吹く。

 文・森合正範/写真・共同/デザイン・高橋達郎

 

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