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【鉄学しましょ】

芸術のよき題材 土屋武之

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 見方によっては不幸にも、私は鉄道を取材し、記事を執筆することを生業(なりわい)にしている。仕事に自由はない。日本の鉄道の全線完乗を目指し、好きに列車を乗り回していた会社員のころとは違う。編集者の求めに応じることが基本だ。キャリアを積んで、多少は自分の意見が通る場合も出てきたが、読者の興味を引く内容でないと採用されない。

 時に「いちばん好きな鉄道は何?」などと尋ねられる。これがけっこう困りもので、「ありません」と答える。大阪生まれで、父方の先祖は出雲なので、阪急や島根県を走る一畑(いちばた)電車など愛着を持っている鉄道はあるけれど、立場上、嫌いはもちろん、好きと述べることも許されないと考えている。プロになった時、「鉄ちゃん」であることは、きれいさっぱりやめた。

 そこへこのコラムの執筆依頼が来た。自由に書いていいという。千載一遇のチャンスである。ならばと、文学など、芸術的なサイドから見た鉄道を語ってみようと思う。もともと私は大学で演劇学を専攻するなど、芸術の世界で生きてきた人間だ。鉄道が奪われてしまった今、芸術だけが残された唯一の「趣味」かもしれない。鉄道は社会の縮図。芸術のよき題材でもある。

 

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