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【鉄学しましょ】

志津川駅 熱気の跡 土屋武之さん

写真

 1977年5月28日に、足尾線間藤(まとう)駅(栃木県)で当時の国鉄の全線に乗るという「完乗」を果たした鉄道紀行作家の宮脇俊三さんは、その後しばらくは張り合いがない日々を送ったという。しかし同年12月11日に気仙沼線柳津(やないづ)−本吉間(宮城県)が開業すると聞き、乗りつぶしへの意欲が再びかき立てられ、勇躍、初日に出向いた。

 超満員の列車に乗り込み、日の丸の小旗を振る祝福を戦時中の出征風景と重ね合わせて見ていた宮脇さんは、中心駅志津川(旧志津川町、現南三陸町)に着いてあぜんとする。人口1万7000人ほどの町なのに、1万人はいるかもしれない人波が駅前広場を埋め尽くしていたのだ。代表作「時刻表2万キロ」には「これはもはや出征兵士の見送りではない」とつぶやくように記している。三陸の鉄道は、災害にたびたび襲われる地域の命綱として敷設が切望されてきた。悲願達成の喜びが歓迎ぶりに表れていたのであった。

 だが、その志津川駅は2011年3月11日の津波で町ごと破壊し尽くされた=写真、12年1月撮影。沿線自治体は気仙沼線の鉄道での復旧を断念。あの日の熱気は、もう二度と帰ってこない。

 

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