東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 鉄学しましょ > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【鉄学しましょ】

手塚治虫と荷物電車 土屋武之さん

写真

 「ヒトラーはユダヤ系だった」という説に基づき、アドルフという名を持つ3人の数奇な運命を描いた手塚治虫の「アドルフに告ぐ」では、太平洋戦争前の神戸が重要な舞台になっている。鉄道が登場するシーンとしては、語り部役の記者、峠草平が特別高等警察に追われた時、逃げ込んだ阪神三宮駅と、1933年に開通したばかりだった地下線が印象深い。38年7月発生の、阪神大水害直後の話である。

 峠はヒトラーの出自を証明する秘密文書を守って、終電後に走っていたという設定の荷物電車の屋根にしがみつき、トンネルの出口がある岩屋で線路脇の架線柱に飛び移って難を逃れた。今も付近の線路の構造は昔のままだ。

 荷物電車とは、当時、私鉄でも盛んに行われていた小荷物(現在の宅配便に相当)輸送専用の列車だが、手塚が描いた電車のディテールは、その頃の旅客用の最新鋭車に近い。おそらく1101形がモデルだろう。つまりは想像の産物なのだが、上下、互い違いに取り付けられた標識灯や運転台上の行き先表示窓など、戦前の阪神電車の特徴はよく捉えている。

 

この記事を印刷する

PR情報



ピックアップ
Recommended by