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【鉄学しましょ】

ぜいたくな時間 村井美樹さん

写真

 駅のベンチに座ってぼんやり列車を待つ。この時間が何とも心地よく、しみじみとした趣を感じられる駅舎がJR肥薩(ひさつ)線にあります。大隅横川(おおすみよこがわ)駅は1903年に開業し、100年以上もその姿をとどめる、鹿児島県最古の木造駅舎です。

 瓦ぶきの切り妻屋根、しっくいの白壁に天井が広々とした待合室や事務室。素朴な造りながら、凜(りん)としたたたずまいです。長年の風雨で、表面の木は黒ずんですり減っていますが、その手触りがまたいい。地元の方々がきれいに手入れをされているのでしょう。無人駅でひっそりとしているのに人の温かさを感じます。ホームにはホオズキが飾られていました。静寂の中、風にそよと揺れるホオズキ。季節を感じられるおもてなしがうれしい。

 このホームの柱には、太平洋戦争時の米軍機による機銃掃射の弾痕が生々しく残されています。地元の方々に大切にされてきた駅は、戦争の恐ろしさを今に伝える生き証人でもあるのですね。

 ベンチに座っていると、地元のおばあちゃんたちが隣に。「ええ駅でしょう」とにっこり笑いかけてくださいました。

 特急「はやとの風」が到着し、後ろ髪を引かれる思いで乗車。あともう少し、あのぜいたくな時間を味わっていたかったなあ。

 

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