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【鉄学しましょ】

「国境」と時を越え 土屋武之さん

写真

 「雪国」の冒頭は、あまりにも有名だ。登場する信号場は、現在の土樽駅(新潟県湯沢町)である。川端康成が湯沢温泉を初めて訪れ、この小説の想を得たのは1934年。谷川岳を貫く清水トンネルが完成し越後湯沢まで上越線が通じたのは、そのわずか3年前の31年だ。鉄道があって初めて冬の雪国を訪れることができ、トンネルを通る前後の気候の大きな違いを感じ得たのであった。

 島村が乗ってきた列車は、実は当時としては珍しい電気機関車けん引の列車である。蒸気機関車が引いているようなイメージがあるが、ばい煙を出していては、全長9702mある「国境の長いトンネル」は抜けられない。

 この上越国境が複線化されたのは戦後のこと。土樽信号場は、列車行き違いのために設けられていた。正式に旅客が乗り降りできる駅となったのは41年だった。

 複線化後の土樽も、特急が普通を追い抜ける設備を持った大きな駅で、葉子の弟をはじめ、多くの職員が詰めていた時代がしのばれた=写真、82年3月撮影。しかし今では規模が縮小されてしまい、かつての面影は消えた。列車が止まり、駅長を呼んでも、もうだれも来ない。

 

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