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【鉄学しましょ】

水上勉の「櫻守」 土屋武之さん

写真

 道路整備がまだ十分でなかったころは、鉄道の線路が道路代わりにしばしば使われた。昔も違法であっただろうけれど、黙認されていたのだ。

 水上勉の小説「櫻守」の主人公、弥吉の雇い主である竹部庸太郎の演習林は、福知山線武田尾駅(兵庫県)からトンネルを二つ抜けたところにあった。武庫川沿いの谷間で他に道はない。2人は列車が来ない時間を見計らい、顔見知りの駅員にあいさつし、枕木の上を歩いて通っていた。戦争中の話で、時には予想外の兵員輸送の臨時列車に出くわし、危うく難を逃れたりもしている。

 竹部のモデルは、ヤマザクラやサトザクラなど日本古来の桜の保護、育成、研究に生涯をささげた笹部新太郎。広大な演習林は「亦楽山荘(えきらくさんそう)」と名付けられていた。現在は兵庫県宝塚市の公園で桜の名所、「桜の園」である。

 付近の福知山線は、1986年に複線電化の新線に切り替えられて廃止された。けれども、風光明媚(めいび)な旧線跡はレールを外した程度の状態でハイキングコースとして整備された=写真。トンネルもそのまま。今となっては何の心配もなく、くぐり抜けることもできる。

 

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