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【鉄学しましょ】

歳月が隔てた2人 土屋武之さん

上が(1)、下が(2)

写真

 趣味の世界では鉄道車両などの「擬人化」がはやりだが、その元祖の一つと言えそうなのが、宮沢賢治の短編童話「シグナルとシグナレス」だ。岩手・花巻駅構内の南寄りに立つ東北線の信号機を男性の「シグナル」=写真(1)、JR釜石線の前身、岩手軽便(けいべん)鉄道の信号機を女性の「シグナレス」=写真(2)(ともに現在)=に見立て、淡い恋物語が展開される。

 両線にはもちろん今も信号機がある。釜石線は北側から入ってくる線形で、広い駅の中ではお互い離れて立っているように思える。しかし、作品が発表されたのは1923年だ。43年まで、岩手軽便鉄道(36年から釜石線)は賢治が勤めていた花巻農学校(今の総合花巻病院の位置)の前を通り、南から花巻駅へ入る線形をしていた。乗り場は旧国鉄の駅舎に向かって左側、現在は東口の駅前広場に面してホテルが立つ場所にあったのだ。跡地を示す石碑もある。

 つまり、2つの信号は現在は駅の北側と南側に離れているが、賢治が見ていたシグナルとシグナレスはどちらも駅の南側にあり、お互い手を伸ばせば届きそうな近い位置関係だったに違いない。

 花巻市博物館には、その時代の花巻駅のジオラマが展示されているので、ご興味がある向きは訪れてみるとよいだろう。

 

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