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【タイムライン】

オランダの扉 100年の時を超え サッカー日本選手 移籍に追い風

オランダへの出発前に取材に応じる太田宏介=1月、成田空港で

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 サッカーのオランダリーグでプレーする日本人選手が今後、急増するかもしれない。100年以上前、両国が交わした「日蘭通商航海条約」が現在も有効だったことが判明。「日本人がオランダで自由に就労し、事業をする特権を認める」との判断が、あらためてオランダで下され、これまで移籍のハードルとなってきた「最低年俸規定」の適用外となった。 (英国在住サッカージャーナリスト・原田公樹)

 条約は1912年に締結。元号が明治から大正に変わる前の7月6日にハーグで署名された。第2次世界大戦などの混乱もあり、長年にわたって忘れられていたが、2012年に意外な形で現代に知られることになった。

 発端はロッテルダムにある日本の文化センター「松風館」が、茶室と日本庭園を建設するため、日本から呼んだ大工を雇ったこと。ところがオランダ労働局は違法就労と見なし、6万ユーロ(当時約630万円)の罰金を科した。ここで提訴した松風館の弁護士が裁判で持ち出したのが、この条約だった。

 松風館が勝訴し、これを判例としてオランダ社会・雇用省は昨年3月、正式に「日本人は労働許可証を取得する必要がない」と発表した。オランダサッカー協会も続き、日本人選手は自由にオランダリーグでプレーできるとした。ことし1月、FC東京からフィテッセに加入した太田宏介の移籍は、“古くも新しい条約”を根拠に実現した最初のケースだ。

 これまで欧州連合(EU)加盟国外でプレーする日本人選手がオランダのクラブに移籍する際、いつも問題になったのが最低年俸規定。自国オランダ人選手の雇用を守るためのルールで同国リーグ平均年俸の1・5倍以上で契約することを定めている。シーズンや為替レートによって変動はあるが、最低年俸はおよそ40万〜45万ユーロ(約5000万〜6500万円)。この金額に見合う価値のある選手でなければ門前払いを食らう。

 フェイエノールトの小野伸二(現札幌)、ヘラクレスの平山相太(現FC東京)。フェンロの本田圭佑(現ACミラン)らこれまでオランダでプレーできた日本人選手は十数人と少ない。最低年俸を支払えないクラブに代わり、選手の個人スポンサーが年俸を捻出したケースもあった。それが1世紀以上前の条約によって、一気に問題が解消されたのだ。

 欧州におけるオランダリーグの位置づけは、イングランドやドイツ、スペインといった主要リーグへの登竜門だ。03〜04年にユトレヒトでプレーし、現在はフェンロのトップチームでアシスタントコーチを務める元日本代表MFの藤田俊哉は言う。「オランダはステップアップするためのリーグ。日本のサッカーと共通する部分も多い。英語も通じるし、日本人にとってなじみやすい。どんどんチャレンジしてほしい」

 日本が鎖国していた江戸時代、オランダは数少ない海外との「窓口」の一つだった。いま再びオランダは、日本サッカーにとって欧州への特別な「扉」になるかもしれない。

 

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