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【タイムライン】

「ファンラン」市民マラソンに変化 記録より走る楽しさ

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 今、市民マラソンに変化が起きている。これまでのように記録の更新や勝つことを目的に走るのではなく、楽しさを求めて参加する動きが広がっている。「ファンランニング」と呼ばれ、イベント化する市民スポーツの実態と傾向を調べた。 (谷野哲郎)

 女性たちが歓声を上げながら、走っている途中で立ち止まる。目の前に並べられたケーキやシュークリームを次々とうれしそうにほおばっていく。先月19日に広島で行われた「第39回スイーツマラソン」で見られた光景だ。

 スイーツマラソンとはその名の通り、スイーツ(甘い菓子)を補給しながら走るイベント。「給水所」ならぬ、「給スイーツ所」が設けられており、このときはジェラート、フルーツ、バームクーヘンにかりんとうなど、約250種類の菓子類が食べ放題として用意された。

 人気だったのは1周1・2キロのコースを5周する6キロの部。参加者1059人のうち、大半の809人が選んだ。制限時間は60分。東広島市から来た三谷祥子さん(25)は母・美也子さん(53)、妹の貴子さん(23)とともに映画のキャラクター「ミニオン」の格好で参加。「普段は全然走ったりしないんですけど。スイーツ目当てで」とゆっくり走りながら、甘味を堪能した。

 大会を運営するインターナショナルスポーツマーケティングの高木貞治社長(53)は「走る楽しさを提案するには、どうしたらいいかを考えた」と話す。ワインを飲みながら走るフランスのメドックマラソンに着想を得たと言い、「日本でアルコールは難しい。なら、思い切ってスイーツまでいった方がいいと」。

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 のどに詰まる事故を防ぐため、菓子類はひと口サイズにし、もちは極力出さない。食中毒の危険性を考慮し、梅雨時、夏場は開催しないなどの配慮をする。広島大会の参加費は6000円(小中学生は3000円)。スイーツマラソン事務局によると、2010年に始まった大会はこれまで39回開かれ、計14万4000人以上の参加があった。

 スイーツマラソンだけではない。ランニングにエンターテインメントを掛け合わせる催しは「ファンランニング(通称ファンラン)」と呼ばれ、年々知名度を上げている。

 例えば、泡にまみれて走る「バブルラン」、色とりどりのパウダーを全身に浴びる「カラーラン」、ゾンビから逃げる「ゾンビラン」など。5キロから10キロ程度と短めの距離と企画性が高いのが特徴。若者を中心に人気が高い。市民マラソンは今、タイムや完走という目標に向けて努力するスポーツから、友人らと一緒に楽しみながら走るという新たな一面を持ちつつある。

 「ファンラン」の動きについて、陸上関係者はどう見ているのか。シドニー五輪金メダリストの高橋尚子を育てた佐倉アスリートクラブの小出義雄代表(77)は「一生懸命やっている人の中にはよく思わない人がいるかもしれないが、楽しんで走るのは決して悪いことじゃない」と寛容な姿勢を見せる。

 小出代表は「銀座の目抜き通りを走る市民ランナーの姿を見てみたい」と提案し、東京マラソンの誕生に関わったという。体調や事故に対しては最大限の注意を払うことを促しながら、「マラソンはプロやエリートだけのものではない。記録を出すために走る。楽しむために走る。どちらも正しい」とさまざまな楽しみ方を歓迎した。

◆女性、地方に照準

 「ファンラン」には幾つかのビジネス戦略がある。スイーツマラソンを例に取ると、「女性」と「地方」という2つのキーワードが見えてくる。

 スイーツマラソン事務局によると、参加者の男女比は6割以上が女性。女性の参加は増加傾向にあるという。年代で見ると、流行に敏感で消費意欲が高いとされる20〜30代の走者が約7割を占める。高木社長は「女性は誰かを誘って複数で参加することが多い。女性のパワーはすごい」と分析。実際に「友人・知人と参加した」が6割以上というデータがある。

 若い女性の参加増は思わぬ効果も生んだ。当初は仮装を想定していなかったが、自発的に増えていったそうで、「参加者が自分たちで楽しみをつくり出している」(高木社長)現状がうかがえた。

 大会はこれまで東京、千葉、神奈川の首都圏だけでなく、北海道、宮城、福島、愛知、大阪、兵庫、広島、山口、福岡、大分と全国各地で開催してきた。高木社長は「地方の持つ力。6月には初めて四国で大会を行うが、地方創生、地方の活性化も大事なこと」と話している。

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