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【タイムライン】

復興の旗 五輪へつなぐ 全国の港をリレー ヨットマンの絆

小笠原ヨットレースに出場した艇に掲げられたフラッグ=小笠原ヨットレース2017実行委員会提供

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 2020年東京五輪と、そのセーリング競技を盛り上げようと、大会の成功を願う旗(フラッグ)をヨットマンが自らの艇にかかげて、全国の港で受け渡していく「フラッグリレー」が始まった。まずは5月上旬に東京都小笠原村をスタートし、神奈川県三浦市に到着。今年は東北地方の港を巡り、東日本大震災で被害を受けたヨットマンを元気づけながら「復興五輪」もアピールする。 (平松功嗣)

 5月の大型連休中に、小笠原諸島・父島の二見港を出発し、三浦市沖のゴールを目指すセーリングの「小笠原ヨットレース」が行われた。出場した12艇のうちの「TREKKEE(トレッキー)」に掲げられたのは「2020年東京オリンピックを成功させよう!」と記された旗。五輪開幕前まで続くフラッグリレーの始まりとなった。

 セーリング競技は小型艇で行われるが、主に遠洋のレースなどに参加する大型艇のヨットマンも五輪の盛り上がりに貢献したいとフラッグリレーを企画。イメージは「海での聖火リレー」だ。

 小笠原レースは2日にスタート。6日までに全艇が無事にゴールし、旗も到着した。トレッキーで旗を運んだ新田肇さん(60)は「前回の東京五輪は、日本全体のお祭りだった。今回も旗が日本中を回る。同じヨットマンとして大会を盛り上げたい」と話す。

 三浦市で7日に行われた表彰式で、旗は新田さんから「弥勒(みろく)II世」でレースに参加した伊藤猛さん(70)に手渡された。水戸市在住の伊藤さんが本拠とする港は茨城県の大洗。東日本大震災では津波が押し寄せ、船首が港のフェンスに突っ込むなど艇も損傷した。

 「隣の福島県いわき市の港にあったヨットは、全滅した」と伊藤さん。それまで開催されていた大洗といわきを結ぶレースも、震災以降途絶えているという。「このフラッグをいわきに持って行って、元気づけたい」と語る。

小笠原諸島からゴールを目指す出場艇=小笠原ヨットレース2017実行委員会提供

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 日本セーリング連盟によると、今年は震災で被災した東北地方で旗をリレーしていく予定。今回の小笠原レースには東北からの出場はなく、伊藤さんは「(被災したヨットマンを)代表して旗を受け取ったと思っている」。大事に旗を運ぶつもりだ。

 フラッグリレーは20年の東京五輪開幕までの期間で、全国の港を訪れる。一緒に運ばれる「海をきれいに」と書かれた旗には、各地の関係者が寄せ書きをして、東京五輪を成功させるための一体感を高める。リレーの実行委員会では「セーリングの関係者が一つの輪になって、東京五輪を一緒に盛り上げたい」としている。

 小笠原レースは、来年の小笠原諸島返還50周年を記念して12年ぶりに開催された。直線距離でも900キロを超える国内有数の長距離レース。沖縄と愛知を結ぶレースのようにおもに沿岸を走って陸地を見ながら行われるレースと違い、コースのほとんどが島影の見えない外洋。大海原を進み、より冒険的な要素が強いのが魅力という。

 今回は各艇に位置情報を知らせる通信機器を積み込み、大会ホームページで各艇がどこにいるかをチェックできるシステムを国内で初めて実施。主催者は「外洋でのヨットレースは観客のいない中で行われるが、今回は陸からでもレース展開が楽しめたと思う」と話している。

◆取材後記

 旗を受け取った伊藤猛さんは、涙ぐみながら東日本大震災を振り返り、被災した仲間のことを話してくれました。大洗といわきを結ぶレースは中断されたままといいます。震災から6年がたちましたが、復興は道半ばであることを痛感しました。

 2020年東京五輪は、招致の段階から「復興五輪」としてもアピールされてきました。福島県内の球場で野球・ソフトボールが行われることが決まり、被災地を巡る聖火リレーも検討されています。

 自らの艇も津波の被害を受けた伊藤さんは「復興への思いもこの旗に込める。東北の連中を元気にしたい。一緒にまたレースに出たい」と話します。今回のフラッグリレーのような東京五輪に伴う催しが、少しでも被災者を元気づけ、復興への一助となることを願います。 (平松功嗣)

 

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