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【タイムライン】

アフリカ系米国人進む野球離れ 大リーグ80年代ピークに

アフリカ出身初の大リーガーとなったヌゴエペ=ピッツバーグで(ゲッティ・共同)

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 米大リーグは今季、故ジャッキー・ロビンソンがドジャースでデビューを果たし、黒人初の大リーガーが誕生して70年の節目を迎えた。しかし、アフリカ系米国人選手は1980年代をピークに減りつつある。要因の一つには米国の社会的背景が挙げられる。一方、初のアフリカ出身選手が4月にデビューするなど、新たな流れも生まれている。(ロサンゼルス・樋口浩一)

 米国野球学会によると、ロビンソンがデビューした1947年、アフリカ系米国人選手の割合は全体のわずか0・9%。徐々に比率は増し、62年には10・1%と初めて1割を超えた。81年には過去最高の18・7%に上った。だが、その後は伸び悩み、2005年には9・1%と1割を切り、昨季は6・7%と過去60年で最低に並ぶ数字となった。

 セントラル・フロリダ大の調査では、昨季のアフリカ系米国人選手は、プロバスケットボールNBAでは74・3%、プロフットボールNFLは69・7%。NBAでは90年以降、70%を下回ったことはない。NFLでも93年以降、65%以上を占めている。

 アフリカ系米国人は、高い身体能力をより生かせるバスケットボールやフットボールを志す傾向が強いとされる。さらに、アフリカ系米国人選手が多数の競技では、その中からスター選手が生まれる確率も高まる。マイケル・ジョーダンに代表されるようなスーパースターが誕生することで、アフリカ系コミュニティーの子どもたちが、憧れからそのスポーツでプロを目指す好循環が競技人口を支える。

 ただ、米国のスポーツ界を取り巻く社会的な環境こそが、アフリカ系米国人の野球離れに大きく影響していることは間違いない。

 大リーグでは、有望選手でも多くは高校卒業後にマイナー契約からメジャー昇格を目指すのが基本線。低所得者層のアフリカ系米国人も少なくない中で、「アメリカンドリーム」をつかむには、安月給で移動も過酷な下積みを経験する道のりが待っている。

 他方、バスケットボールやフットボールは大学を中心に発展してきた歴史があり、野球よりも奨学金の枠が多い。経済的に余裕のない家庭で育っても、多額の奨学金がもらえる上に、プロも目指せる。学生時代の活躍次第では、即戦力としてプロ入りできる。大卒資格を得られるのも魅力的だ。

 有能なアフリカ系米国人が大リーグに進まないことが主流であり続ければ、レベルアップは見込めない。危機感を抱く大リーグ機構は、アフリカ系コミュニティーで少年向けの野球教室を開くなど普及活動に力を入れている。

 その一方で、大リーグに「ニューウエーブ」も現れた。パイレーツのギフト・ヌゴエペ内野手。南アフリカ出身の27歳は、初のアフリカ大陸生まれの大リーガーとして4月26日にデビューを飾った。ラグビーやサッカー、クリケットなどが人気の南アフリカで、母親が野球施設に勤めていたことから3歳で野球を始めた異色の経歴を持つ。

 ヌゴエペは07年、08年にイタリアであった大リーグ主催のヨーロピアン・エリート・キャンプに参加し、実力を認められて18歳でマイナー契約。05年に始まった同キャンプでは、元大リーガーの指導の下、欧州やアフリカの15〜19歳の選手が集まり、練習や試合をする。11年からは南アフリカでも開催されている。

 「今、大リーグにいられるのはとても楽しい。一流選手と直接話ができてプラスになる」とヌゴエペ。「どんどんアフリカから大リーガーが生まれるといい」。アフリカ系米国人選手が減少傾向にある中、ヌゴエペの言葉が現実になれば、大リーグは新たな時代を迎える。

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