東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > タイムライン > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【タイムライン】

野球離れの危機救え 埼玉発・西武など4球団が普及に一丸

写真

 若い世代の野球の競技人口が減っている。安全面から公園での野球を禁止するなど取り巻く環境に加え、多様なスポーツを楽しむ傾向も背景にあるとみられる。その中で、埼玉県内にある野球・ソフトボールの4球団が共同で競技の普及活動を始めた。日本でメジャースポーツとして歩んできた「野球」は、新たな岐路に立たされている現状が浮かび上がる。 (磯谷佳宏)

 プロ野球では、日本ハムの大谷翔平が投打「二刀流」を実現した上に、国内最速165キロを記録した。ソフトバンクの柳田悠岐、ヤクルトの山田哲人はトリプルスリーを達成するなど次々と若きスター選手が誕生している。米大リーグでもダルビッシュ有、田中将大らが活躍。高校球界に目を移しても早実(東京)の清宮幸太郎が高校通算本塁打数で話題を集めるなど次世代を担う選手も出てきている。

 ただ、データをひもとくと、中長期的には楽観できない。全日本野球協会によると、2010年の小学生の競技人口は全国で硬式、軟式合わせて31万3140人だったが、16年は25万5332人と約5万8000人も減少。中学生に至っては10年の34万3119人に対し、16年には23万6754人と約10万6000人も減っている。実態を全て網羅し切れていないため「推計」の域は出ないが、減少傾向にあることは間違いない。

 背景にはプレー環境の制約がある。硬いボールやバットなど用具の危険性を考慮して野球を禁止する公園が少なくない。校庭で野球を禁止する学校が以前より増えている印象も否めない。漫画「サザエさん」が描く放課後に空き地で野球を楽しむ古き良き日本の原風景は失われつつある。

 元中日で野球評論家の山本昌さんは「小さいころは男の子は野球をするんだという時代だったが、1990年代からサッカーやバスケットボールなどいろんなスポーツにスポットが当たるようになった」と楽しむ競技の多様化を指摘。プロ野球界も「黙っていても来てもらえる時代から変わってきた」と話す。

◆体験イベント開催「全国のモデルに」

「PLAY−BALL!埼玉」の発足会見に臨んだ左から川端、炭谷ら=4月、埼玉県所沢市で

写真

 一通のファンレターから全ては始まった。「息子が近所の公園でも野球ができない。どうにかできませんか」。昨年の暮れ、プロ野球西武の炭谷銀仁朗に、野球少年の母から切実な手紙が届いた。「初めて生の声を聞き、驚いた」。炭谷は球団に直訴し、プロジェクトは産声を上げた。

 女子野球の埼玉アストライア、女子ソフトボールの戸田中央総合病院メディクス、独立リーグの武蔵ヒートベアーズ。同じ埼玉県内の野球・ソフトボール関係者へ協力を呼び掛け4月に「PLAY−BALL!埼玉」が発足した。

 今月18日、同県和光市の公園で開いた初の催しには、県内外から46組109人の親子らが参加し、キャッチボールや野球をモデルにした簡易型のレクリエーションを楽しんだ。活動は競技に親しむきっかけづくりが目的のため、グラブといった本格的な用具は使わず、スポンジ状のボールなどを活用。今後は幼稚園や保育園などでも開催する。

 ヤクルトの川端慎吾を兄に持つ埼玉アストライアの友紀は「昔は毎日、家の近くで兄と野球をしていたけど、今の子どもたちに聞くと、それはできない」と現状を語る。体育の授業で野球の指導に行くこともあるが、「ボールの投げ方が分からない。投げたことがないという子どもたちもいる。野球に触れ合う機会が少ないんだなと感じる」と危機感を募らせる。

 「多くの子どもたちに野球を好きになってもらえれば」と炭谷。西武の井上純一事業部長は「これを全国のモデルケースにしたい」。埼玉発で野球離れを食い止める取り組みを全国へ広げていく。

 

この記事を印刷する

PR情報