東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > タイムライン > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【タイムライン】

トランポリン世界代表 岸彩乃・大貴 姉弟大舞台へ弾む

 11月にソフィアで行われるトランポリンの世界選手権日本代表に、岸彩乃(金沢学院大ク)と大貴(ポピンズ)の姉弟が選ばれた。歩んできた道が対照的な二人が初めて一緒に代表入りし、ともに大舞台へ挑む。 (平松功嗣)

◆若手台頭に悔しさ再起を

 2012年のロンドン五輪。初出場だった彩乃は予選で敗退して涙した。昨年のリオデジャネイロ五輪では、代表入りを逃した。リオ五輪後に24歳になり、身の振り方に悩んで「引退も含めて迷った」というが、現役続行を決めた。練習の拠点をカナダに移すなど、心機一転、再び世界への戦いを始めた。

 ロンドン五輪のころまでは、日本女子のエースだった。だがその後に若手が台頭。リオ五輪には5歳年下の中野蘭菜(星稜ク)が出場した。今年の世界選手権代表の1次選考会では、17歳の森ひかる(金沢学院大ク)がトップで内定。最終選考会の予選でも森の同級生の高木裕美(同)に首位を譲った。

 日本女子のレベルアップのためにも、ライバルの存在と若手の台頭は歓迎すべきことだ。だが彩乃は現在の状況について、「うれしくもあり、悔しくもあり…。悔しさの方が大きい」と話す。トップ選手として、勝負へのこだわりは少しも失っていなかった。

 迎えた最終選考会の決勝。難度の高い技を丁寧にまとめ、高さもある演技で高木を逆転して首位で通過した。

 世界選手権では団体も行われる。代表には中野が落選し、彩乃を除く3人は世界選手権初出場。経験豊かな彩乃がチームを引っ張ることになる。所属クラブと日本代表で長く指導してきた日本体操協会の丸山章子・女子強化本部長は「日本の女子のことをよく考えている。お姉さん的な感じで若い選手を導いてくれれば」と信頼を寄せる。彩乃も「演技で引っ張っていけるように。どこまで団体で勝負できるかで2020年東京五輪にもつながってくる」。

 再起したエースが、東京五輪へ向けた挑戦をスタートさせる。

日本代表の後輩たちを「演技で引っ張る」と意気込む姉の岸彩乃=群馬県高崎市の高崎アリーナで

写真

◆メンタル成長 ここから

 弟の大貴は、高校時代は無冠だった。大学に入っても、選考会に出場しながら何度も日本代表入りを逃した。結果を意識しすぎるあまり、「優勝するため、代表になるために演技をしてしまった。力を出し切れなかった」。姉の背中をずっと追いかけてきたが、なかなか同じ舞台に立てなかった。

 転機はリオ五輪につながる世界選手権の選考会(15年6月)で代表入りを逃した後に訪れた。大事な試合で勝てない現状を打破するために、メンタルトレーニングの研究者に話を聞き、「トランポリンの台に乗ったら、結果ではなくて自分の演技に集中すればいい」と勧められ、試合に臨む意識を変えた。

 すると、15年8月の全日本学生選手権で優勝。ようやく試合での心の持ちようが分かった。今回の最終選考会の決勝も、同じ気持ちで臨んで首位で世界への切符を獲得。「今まではプレッシャーに負けていた。この選考会は自分の演技を出し切るというメンタルで戦えたことが一番の成長」と胸を張った。

 ついに姉と肩を並べて、日の丸を背負う。「積み重ねてきたものを本番で出したい」。姉より少し時間はかかったが、まだ22歳。世界の舞台、その先にある東京五輪への戦いは、始まったばかりだ。

日本代表の最終選考会で、高さのある演技を披露する弟の岸大貴

写真

◆「弟に学ぶことも」「姉の経験頼りに」

 日本代表入りした姉弟は、6月下旬に群馬県高崎市で行われた最終選考会後の会見で喜びを分かち合った。彩乃は「今まで一人だったので、そろって代表に決まったのが本当にうれしい」と笑い、大貴も「何より両親にいい報告ができる」と満足そうに語った。

 子どものころはけんかもしたというが、姉が世界選手権などに出場し始めたころから、弟も尊敬のまなざしを向けるようになったという。

 大貴は「経験はもちろん姉の方が豊富。(世界での)戦い方も知っていると思う」と姉を頼りにする。

 彩乃も「技のこなしだったり動きだったりは、私が弟に学ぶこともある」。励まし合い、刺激し合いながら世界選手権へと挑む。

<きし・あやの> 1992年10月29日生まれ、石川県小松市出身。体操選手だった両親の影響で、幼稚園のころにトランポリンを始める。2009年に世界選手権初出場。19歳で出場した12年ロンドン五輪では予選14位。現在は金沢学院大職員。

<きし・だいき> 1994年9月22日生まれ、石川県小松市出身。姉の背中を追って3歳でトランポリンを始める。強豪の金沢学院大では主将を務め、2015年全日本学生選手権で個人、団体など4冠。今季より子育て支援事業などを行うポピンズ所属。

初めて姉弟そろって日本代表となり、健闘を誓い合う岸彩乃(右)と大貴

写真
 

この記事を印刷する

PR情報