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【タイムライン】

ハマのレガシーに 20年五輪主会場・横浜スタジアム「ボールパーク」化

横浜スタジアムの完成予想図=横浜スタジアム提供

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 プロ野球DeNAの本拠地・横浜スタジアムが、2020年シーズンから新たに生まれ変わる。同スタジアムは20年東京五輪の野球・ソフトボールのメイン会場。4年に1度のスポーツの祭典は、日本球界で近年トレンドとなっている「ボールパーク化」の流れを勢いづけるか。 (中川耕平)

◆地域と一体「都市空間」

 「海外からの客を含め、より多くの人が見に来られる空間を提供したい」。11月に横浜市内で報道陣を対象に開かれた説明会。DeNAの岡村信悟球団社長は3年後を見据えたビジョンを熱く語った。思い描くのはスタジアムを中核とした街づくり。鍵を握るのがボールパーク化だ。

 横浜スタジアムは1978年4月に開業。2018年にオープン40周年を迎えることから施設の老朽化が問題となっていた。加えて、収容人数は12球団の本拠地で最も少ない2万9000人。チームが19年ぶりに日本シリーズへ進んだ今季は観客動員数197万9446人と過去最多を記録した。ここ数年はAクラス争いに加わるなどして観客動員数は右肩上がり。ファンからは「チケットが手に入らない」との声が上がっていた。

 16年に球団と球場の経営を一体化。収益力を高めていく中でスタジアムの改修は喫緊の課題だった。さらなる追い風となったのが東京五輪だ。08年の北京五輪以来3大会ぶりに野球・ソフトボールが正式種目に復活。昨年12月、五輪の主会場に選ばれた。

 世界最大級のスポーツイベントの一翼を担うことで、「ヨコハマ」をはじめ、DeNA球団、さらに魅力を増したボールパークとなる横浜スタジアムを海外に広くアピールできる絶好の機会を得た。もともと周辺は横浜中華街があるなど国内外から多くの人が足を運ぶ一大観光地となっているが、岡村社長は「これまでにない都市空間をつくる」と意気込む。

ボールパーク化を説明するDeNAの岡村球団社長=横浜市内の球団事務所で

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 既に着工しており、毎年シーズンオフを利用して工事を進め、20年シーズン開幕前の完成を見込む。費用は約85億円。計画ではバックネット裏と両翼に座席を増やし、収容人数は6000人増の3万5000人に。右翼から左翼にかけてはスタンドに沿うような円弧状の「回遊デッキ」を新設。試合のない日も開放し、スタジアムを公園のように散歩やジョギングなどで楽しめる場にしたい考えだ。

 岡村社長は「横浜は近代文化発祥の中心地。横浜スタジアムの大改修を都市空間創造のきっかけにし、人と人とが出会い、コミュニケーションが生じるボールパークを目指す」と話す。東京五輪を視野に入れた一連の取り組みで、日本有数の都市である横浜がどのように進化していくのか。行方が注目される。

<球場のボールパーク化> 野球の試合を観戦するだけでなく、飲食やファンサービスなどを含めてスタジアムの滞在そのものを楽しむ。米大リーグでは主流のスタイルで、プロ野球でも近年、浸透している。球団はチケット販売以外の収入源を増やしたり、新たなファン獲得が期待できる。国内では、オリックスが2003年に選手と同じグラウンド目線で観戦できる「フィールドシート」をファウルゾーンに導入したのが先駆け。楽天が16年に左翼席後方に観覧車を設置するなど、各球団が知恵を凝らしている。

◆青少年の野球離れ 歯止め 西武も改修着手

メットライフドームに新設されるVIPラウンジ=埼玉西武ライオンズ提供

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 ボールパーク化は野球人口減少に歯止めをかけることができるのか−。このオフからメットライフドームの大型改修に取り組む西武の後藤高志オーナーは「環境を充実させることで青少年が親しみ、スポーツを支える層を充実させたい」と期待する。

 埼玉県所沢市に本拠地を移して2018年で40周年。その記念事業として総額180億円を投じ、観客席の全面改修やサブグラウンド、選手寮の新設などに着手する。目玉の一つはバックネット裏に設けるVIPラウンジ。球界最大級となる約430人収容。最前列(約150席)はバッターボックスが目の前に見える「砂かぶり席」となり、今までにない臨場感が味わえるという。野球以外の楽しみを提供するため、遊具を備えた「こども広場」(約1000平方メートル)もドーム外にオープンさせる計画だ。

 11月に改修計画を発表した後藤オーナーは「野球が小学生に1番人気というわけではなくなっている」と危機感をあらわにした。日本中学校体育連盟によると、全国で本年度の軟式野球部員数は男女合わせて約17万7000人。15年前に比べて約44%も減り、少子化でも微増して約21万8000人となったサッカーとは対照的だった。

 娯楽が多様化する中で求められているのは、これまで以上に幅広い世代が訪れるような仕掛けづくり。「新しい価値を提供したい」と後藤オーナー。改修完了は21年春の見込み。エースの菊池は「子どもたちが『野球を始めたい』『ライオンズに入りたい』と夢を持つ素晴らしい球場になるのでは」と話した。

◆構想 ラグビーにも波及

 「ボールパーク化」は他競技にも波及しそうだ。スーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」を運営するジャパンエスアールは、プロ野球DeNA前球団社長の池田純氏を招聘(しょうへい)。サンウルブズの本拠地、東京・秩父宮ラグビー場に人が集う仕掛けを進める。

 11月に東京都内で記者会見した池田氏は、サンウルブズを「世界最高峰の戦いが国内で見られる」と評価した。ただ年間の売り上げ約10億円に対し、1億円以上の赤字を計上しており「勝敗は一過性。ラグビー場に来ること自体が面白いと思わせないと」と持続的な集客の必要性を強調した。

 池田氏は、球界に参入した2012年シーズンから5年間で年間観客動員数を約180%も増加させ、球団経営を黒字化させた実績を持つ。そのノウハウをラグビーにも生かす構えで、「少しずつでも実現できるところからやりたい」と抱負を語った。 (対比地貴浩)

 

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