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【タイムライン】

「第2の人生」どう描く プロ野球では…企業や大学と協力 支援へ

「セカンドキャリア特別選考入学試験」に関する協定の締結式に出席した日本プロ野球選手会の大島洋平理事長(右から2人目)=東京都渋谷区の国学院大で

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 日本プロ野球選手会が引退選手のセカンドキャリア支援に力を入れ始めた。民間企業と協力して就職関連のサイトを開設。教職課程がある大学と特別選考入試に関する協定も結んだ。ユニホームを脱いだ後に望む道へ進める選手は多くなく、引退後の不安を少しでも解消しようとする狙いがある。(磯部旭弘)

 選手会は11月、「セカンドキャリア特別選考入学試験」に関する協定を国学院大と結んだ。教員やスポーツ指導者を目指す元選手らを対象にした制度で、合格者は人間開発学部で教職課程を履修できる。奨学金として入学金と4年間の学費が給付される。同様の試みは球界で初めてだ。

 協定に署名した選手会の大島洋平理事長(中日)は「意識改革をやってきたが、野球界にとって、まだまだ課題が残る点が多い」と現状を説明。「選手にとって選択肢は多いほうがいい。いろいろな大学からも声がかかればいい」と期待した。

 引退後を案じる現役選手は多い。日本野球機構(NPB)は若手に対して意識調査を毎年実施しているが、2016年10月の秋季教育リーグ中に行ったアンケート結果によると、回答者277人(平均23・1歳)のうち、約7割が引退後に不安を感じ、その不安要素として大半が進路と収入を挙げた。

 プロとしての成功を収めたい選手にとって、目の前の試合や練習が最優先。「その次」の視点は乏しい傾向にある。「選手は辞めた後をイメージできないし、考えたくもないところもある」と選手会の森忠仁事務局長(元阪神外野手)は代弁する。ただ、社会に出る機会が遅れれば自信の喪失にもつながりかねず、「第2の人生」を考える動機づけが課題となる。

 選手会では民間企業と協力し、14年12月から引退選手向けの就職支援サイトの運用を始めた。進路については球団やアマチュア時代に世話になった関係者に相談する例が多く、まだ活用実績は少ないが、森事務局長も「選択肢は多いほうがいい」と強調。若手選手への研修を開くなど、選手会側はこれまでの受け身の姿勢から支援の充実に動こうとしている。キャリア支援の担当者も「体制がしっかりすれば、現役生活もより集中できるはず」と話している。

◆毎年約130人が引退や戦力外

 プロ野球の世界は選手の入れ替えが激しい。ドラフトで新戦力が入団するため、戦力外や引退する選手は毎年130人ほどで推移している。このうち約70%が再び野球関係の職に就いており、それ以外の道を選ぶケースは少ないのが現状だ。

 NPBが今年5月に公表した追跡調査によると、2016年シーズンの場合、日本人の総引退選手は125人。平均年齢は29・6歳で、平均在籍年数は8・5年だった。その後の動向をみると、他球団と選手契約を結んだのは8人。育成選手として再契約や球団スタッフの就職などNPB関連は52人と最多。

 独立リーグや社会人野球を含め、その他の野球関連は22人。野球解説者などメディア関連は6人いた。一方、一般企業への就職と自営の道を選ぶ人は計15人。未定・不明は17年4月時点で22人だった。

 選手会が「第2の人生」への円滑な移行を目指すのは、球界を取り巻く環境が時代とともに変わっているため。スポーツファンの楽しみ方が多様化しており、「野球人」の活躍の場が広がることで、競技への関心が社会で高まる波及効果も期待している。

◆Jリーグでは…「入る前」から意識付け

 サッカー・Jリーグは選手会からの要望を受け、現役選手の人生設計やセカンドキャリアの支援に取り組む「キャリアサポートセンター」(CSC)を2002年に設置。▽スポーツメーカーや民間サッカースクールへのインターンシップ(就業体験)▽契約を更新されなかった選手対象の進路相談−といったバックアップ体制の構築を進めた。

 Jリーグ開幕は1993年。9年後に「第2の人生」の対策を本格化させたが、選手の現役志向もあって100パーセントとはいかない。14年シーズンの登録抹消選手136人のうち、JFL・地域リーグ移籍は41人。東南アジアなど海外へ18人。就職はJクラブ28人、指導者など競技関連10人。一般就職12人、就学・復学2人と続き、全体の18%に当たる25人は15年3月末時点で未定だった。

 そのため近年は早い段階での意識付けへとシフトしている。「出口だけでなく、入り口も大事」(Jリーグ担当者)という訳だ。10年からは現役の若手に加えて中学生らアカデミー選手への教育に重点を置く。アカデミー選手にもクラブ経営やサッカー界の職業を学ぶプログラムを導入。約40のクラブが実践中という。

 現在JリーグのCSCは他部門と統合され、事業主体は選手会に移った。選手会事務局は「契約満了になるタイミングはなかなか予測できない」とし、英会話や指導者資格講習会といった費用を補助するなど支援の充実に力を入れている。

 

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