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【タイムライン】

長距離シューズ 箱根でも活躍

ナイキが開発した厚底のランニングシューズ

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 テレビドラマで脚光を浴びたランニングシューズの開発物語。トップクラスの長距離選手の足元は薄底が主流であり続けたが、その真逆となる厚底を特徴にするタイプが登場した。国内外の有力選手が履き始め、ランニングシューズ界に新たな波が押し寄せている。 (磯部旭弘)

 昨年末まで放送された、足袋屋の人々によるランニングシューズ開発のテレビドラマ「陸王」の影響を受け、新年早々の箱根駅伝でランナーの足元に視線を送った人も多かっただろう。厚底のシューズは、往路優勝を果たした東洋大の選手らも着用していた。

 「このシューズは選手の最大限のパフォーマンスに寄り添っていける」。スポーツ用品大手ナイキの担当者、加部慎太郎さんは昨夏に本格的な発売が始まった「ズームヴェイパーフライ4%」に手応えをにじませる。見た目にも分かる厚底の正体は、スプーン状のようなカーボン製プレートを含む3層構造のソールだ。

 この新たなシューズの開発は、昨年5月にイタリアで男子マラソンの2時間突破に挑戦した同社のプロジェクトに向け、数年前から始まっていた。マラソンを走っているときのシューズには何が必要か。厚底が生まれる契機は、このプロジェクトの走者の一人でリオデジャネイロ五輪金メダリストのエリウド・キプチョゲ(ケニア)をはじめとする選手の回答にあった。

厚底のシューズを履き、箱根路を走る東洋大の山本修二(左)と吉川洋次=2日、神奈川県平塚市で

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 「クッションが欲しい」。実績を残す世界トップクラスの選手ですら、30キロ付近で地面からの衝撃にきつさを感じるというのだ。これまでの進化の流れから薄さを求められると思っていた開発陣とは逆の発想で、驚きがあったという。ただ、クッション性を高めて底を厚くするだけでは、重量や推進力に影響を及ぼす。相反する要素を成立させるためにたどり着いたのが航空宇宙産業で、この分野で用いられる素材をランニングシューズ用に改良。カーボン製プレートを挟み込むような構造が出来上がった。

 靴底の最も厚い部分で約4センチ。従来の最速モデルより1センチほど厚くなったにもかかわらず、約10グラム軽量化することに成功。「軽さ」「クッション性」とともに「推進力」はカーボン製プレートの跳ね返りなどで、より前へ進みやすいようになっている。「現在の技術革新とうまく合ったところはある」と加部さん。生産が少ないため入荷待ちの状況が続くが、見据えるのは市民ランナーへの浸透だ。「厳しいマーケットの中で、先頭に食い込んでいける武器になる」と話す。

 東京五輪の開催を2年後に控え、性能向上を目指して各社の開発競争も激しくなる。新しい「足元の顔」が主要大会だけでなく、各地のマラソン大会など身近な場面でも次々と現れるに違いない。それは薄底か厚底か、はたまた別の新機軸か。今後も注目を浴びそうだ。

昨年5月に男子マラソンの2時間突破記録に挑戦したエリウド・キプチョゲ(最後尾)。前方を走るペースメーカーらとともに新開発の厚底シューズを履いた=ゲッティ・共同

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