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【タイムライン】

Jの未来 経営力で問う コンサル会社がランク付け

昨季は10年ぶりにアジア・チャンピオンズリーグを制した浦和。サポーターやクラブの後押しも実った=2017年11月25日、埼玉スタジアムで

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 Jリーグは今年5月、25周年を迎える。6大会連続6度目のワールドカップ(W杯)出場を決めるなど競技力向上に寄与してきた半面、今後はクラブの経営強化に一層、力を入れる重要性も叫ばれる。「Jリーグマネジメントカップ」(JMC)。リーグ戦、YBCルヴァン・カップ、天皇杯と国内主要大会にはない経営力を評価する“タイトル”が今、クラブ関係者から注目を集めている。 (磯谷佳宏)

 JMCはJリーグ全クラブをビジネスマネジメントの観点から順位付け。ランキングは監査・税務・コンサルティングの会社「デロイトトーマツ」が算出している。

 Jリーグが開示した情報から、平均入場者数やスタジアム集客率などを精査した「マーケティング」、勝ち点1当たりの人件費や入場料収入を換算した「経営効率」、売上高に対する人件費率などでみた「経営戦略」、クラブの経営規模などでみた「財務状況」の4つのテーマを柱に据え、独自の視点で採点。全クラブを経営的な視点で評価する取り組みを2014年から続けている。

 最新版となる16年のJMCで「優勝」したのは、J1が浦和、J2が山口、J3は栃木。浦和を例に挙げると、平均入場者数が3万8208人で、2位G大阪の2万5342人を大幅に上回る。安定した観客動員は、スポンサー収入やグッズ販売にも好影響を与えている。一方、新規観戦者の割合はJ1最下位。スタジアム集客率も9位の60%で、80%超でトップだった川崎とは差がある。項目ごとの数値を分析すると、各クラブの経営上の強みと改善すべき点が客観的に見えてくる。

 「ビジネス活動にフォーカスを当てる」。公認会計士で担当の里崎慎氏は言葉に力を込める。同社のグループ会社はイングランドやスペイン、ドイツなど欧州主要リーグのクラブを対象に経営状況を分析し、順位付けする「フットボール・マネー・リーグ」(FML)を1998年から展開する。

 アジア版も作ろうと模索した。だが、「経営情報が開示されていないので、作れない」。立ちはだかった“アジアの壁”。それでも、情報開示が進んでいるJリーグに着目し、JMCは誕生した。

 「これによって新しい情報が出てきたわけではない」と里崎氏。JMCはマネジメント向上に役立ててほしいと、開示情報を精査し、提示しているにすぎない。「Jリーグに頼まれたわけでもないんですよ。勝手にやっているんです」と笑う。ただ、今では活動が認められ、Jリーグのサポーティングカンパニーに。クラブの中には、既に地元自治体の支援や、スポンサー集めのPR材料としてJMCを活用する動きも出始めた。

 サッカー市場は世界規模。年間に数十億円を稼ぐトップ選手がおり、主要な国際大会は膨大な放映権料が発生する。巨額マネーが飛び交う中、自国リーグに投資を求めるならば、クラブ運営の透明性確保は必須。里崎氏は「どの国も資金を呼び込みたいが、自分たちの活動が『ブラックボックス』では、誰もお金は出してくれない」と指摘する。

 同社がタイ、インドネシアなどアジア諸国にJリーグを通じてJMCを紹介すると、反響は大きかった。「情報開示の流れができつつある。各国のリーグがいかに健全か説明する重要性に気付きだしている」。同社は将来的なアジア版FMLの実現を目指す。サッカーの世界市場を横軸で比較できる指標があれば、ビジネスチャンスは広がり、各国リーグの繁栄につながる。

 ピッチ上のスペクタクルばかりが脚光を浴びてきたが、Jリーグの未来にはビジネスマネジメントの強化が欠かせない。里崎氏は「クラブはフィールド、ビジネス双方のバランスを良くしていかないといけない」と強調する。

◆「新規顧客」開拓にらむ

 25年目のシーズンを終えた昨年12月、村井満チェアマンは「地域密着で、根を広げた25年だった」と総括した。Jリーグの年間総入場者は昨季、カップ戦なども合わせ過去最多となる1078万9107人を記録し、前年に比べ47万272人増。3年連続で1000万人を超え、堅調な数字を示した。

 今後の鍵は「新規顧客」の掘り起こし。Jリーグ調べでは、J1の年間平均観戦頻度は、「16回以上」が37・4%でトップ。「11〜15回」の10・8%が続く半面、「1〜2回」は9・4%。村井氏は「いかに1〜2回のお客さまを増やせるかは継続的な課題と認識している」と話す。

 Jリーグは英国の動画配信大手、パフォーム・グループと10年間で約2100億円の大型契約を締結。昨季から全試合を「DAZN(ダ・ゾーン)」で中継、配信を始めた。巨額の放映権収入を背景に、成績に応じて金額に差をつける「理念強化配分金」の仕組みを新設した。

 「過去25年で(各クラブは)土台ができた。今後は競争のフェーズ(段階)に入っていく。より結果を出したクラブが財務的にも潤う仕組みができれば」と村井氏。「次は深く地中に根を下ろしていく25年に」とリーグのさらなる発展を思い描く。

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<採点方法> 4つのテーマを細分化し、計12の採点項目を設けて評価。各リーグに参加しているクラブ数に応じ、項目ごとにJ1は1位18点〜18位1点、J2は1位22点〜22位1点、J3は1位13点〜13位1点として採点し、合計した。

 

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